俺様で冷徹なハイスペック医師は ツンデレで不器用で激甘な素顔を隠せない

葵が震える右手を伸ばし、ナースコールに指を掛けた、その時だった。

​静寂を切り裂くように、重厚なスライドドアが滑らかに開いた。

 「無駄な体力を遣うな」

​低く、硬質で、冷たさを帯んだ声。

​闇の中に浮かび上がったのは、白衣のボタンをきっちりと留め、隙のない佇まいで立つ男——葵の主治医、御堂律(みどうりつ)だった。

​29歳という若さにして、この御堂記念総合病院の心臓血管外科で圧倒的な実績を誇る天才医師。

そして、この病院の理事長の息子でもある。

​「み……どう……せん……せ」

「喋るな」

​御堂は迷いのない大股でベッド脇へと歩み寄った。

手際よく壁の大型モニターに視線を走らせる。

​「心拍数161。ST上昇、心室内伝導障害の兆候。……ナースコールを押す猶予などなかったはずだ。手元のセンサーが異常値を検知した時点で、ナースステーションのモニターには警告が出ている」