「だけどね、きっと『それってマザコンだよ』って言っても、彼にはわかってもらえないんだろうなって気がするのよ。

さっきは『同じ人間なんだから、理解できるって信じたい』って言ったのに、矛盾してるよね、私。

頭ではそう思ってても、自分の彼氏のことになると全然ダメで。

ありえない、理解できない、どうして?って思っちゃって」

「まあ、それが普通の反応なんじゃねえの?」

「篤がマザコンだったこともショックだったんだけど、自分自身の矛盾にも嫌気がさして。

こんなんで、本当に臨床心理士になんてなれるのかなって」

「それは、別問題だろ」

タカ君は短くなったタバコを灰皿に押し付けた。