何か言ってほしい。無言のままのライカンにアーリアはまた不安に駆られた。
(嫌われているとしても、だとしてもわたくしまで遠慮する事はないわ)
子供のように泣いて恥をさらしたアーリアは、失うものはないと心を奮い立たせて顔を上げた。
青ざめた顔でこちらを見つめるライカンに、アーリアは目を丸くした。
「私は殿下に、泣くほど辛い思いをさせていたのですね‥‥」
どんどん青ざめていくライカンを見て、アーリアは戸惑った。
(自覚がなかったの‥‥?)
「申し訳ありません」
真っ青な顔で謝罪するライカンを見て、アーリアは正直に言った。
「つ、辛かったわ。だって微笑いかけてもくれなくて‥‥わたくしのことが、き、嫌いになったんだと‥‥」
また泣きたくないので、アーリアは歯を食いしばった。すると、大きな長い腕がアーリアを包んだ。抱きすくむ訳ではなく、極力触れないように、ふわりと包み込まれた。
「さ、触らないし‥」
堪えきれなくてアーリアはまた泣いた。ライカンの腕はびくりと離れかけたが、すぐにしっかりと抱き竦めた。恐る恐る、ゆっくりと。
「嫌いではありません。嫌いな訳がありません。何年も、何年もお慕いしているのですから」
「えっ」
抱き竦められた嬉しさが、思いも依らぬ発言で吹っ飛んだ。
「うそよね?」
驚く程冷静な声で言った。

