「ノエル!」
「……ああ、殿下ですか」
ノエルと王子の婚約が決まり、本格的に交際が始まった。
……のだが、ノエルは一向に気乗りしない。
彼女が気のない返事を繰り返す中、王子はノエルの気を引こうとしている。
「ノエル、今度一緒に、どこか出かけないか?」
「いえ、外出はレオンと一緒なら1人でも行けますので」
「レオンと一緒って1人じゃないよね?」
王子は、ノエルの傍に控えるレオンを鬱陶しそうな顔で睨んだ。
レオンは無表情のまま、ただ付き従っている。
ノエルにとっては、レオンは自分の護衛であり、ついてくるのが当然だが、王子に説明する義理もない。
「そうだ、ノエルにプレゼント!」
「……この石は?」
「宝石だよ! 名前は知らないけど、国庫から持ってきた!」
「返してきてください」
王子のやらかしで、ノエルが泥棒呼ばわりされてはたまったものではない。
宝石を突き返すと、王子は渋々受け取った。
しかし、それで諦めるような王子ではない。
「じゃあ、ノエルに花をプレゼントしよう!」
そのへんに生えている花を摘んで、ノエルに手渡す。
……もしかして、この王子、相当の馬鹿では?
ノエルは苦笑いしながら花を受け取った。
「レオン、これ持ってて」
「はい」
王子に渡された花を、すぐにレオンに横流す。
レオンは重厚な漆黒の鎧の姿でタンポポを持っているというシュールな光景になった。
ノエルは思わず吹き出す。
「いいわね。似合ってる」
「そうですか」
なぜ、ノエルにプレゼントしたのに、ノエルとレオンの仲睦まじい姿に変換されるのか。
王子は苛立ちで赤面した。
王国最強の騎士がほしかったとはいえ、この光景を毎日見せつけられるのは我慢ならない。
「ノエル、今度いっしょに食事に行かないか?」
「え? わたくし、堅苦しいテーブルマナーはちょっと」
「未来の妃がそんなことでは駄目だよ。他の国と会食になったらどうするつもりだい?」
それはそう。正論である。
ただ、ノエルはそもそも王家に嫁ぐつもりがなかったのだから納得いかない。
王子は「僕がマナーを手取り足取り教えてあげる」と無理やりノエルの手を取った。
「殿下。女性に許可なく触れるのはいかがなものかと」
レオンが、ノエルの嫌がっている表情を見て察した。
2人の間に割って入り、止める。
王子はますます機嫌を損ねた。
「お前! 僕と婚約者の問題だぞ!」
「私はその婚約者の護衛騎士ですが」
「お前、生意気だな! 口を出すな!」
「殿下」とノエルが口を挟む。
「レオンがわたくしについているのは、国王陛下もお認めになられております」
王子は苦々しい顔で口をつぐんだ。
舌打ちをしながら、ノエルから手を離す。
王国最強の騎士レオンは、国王のお気に入りになっていた。
従順で忠実、おまけに強い。
王子もそれに文句を言えない。
王子は「じゃあ、また」と立ち去ったが、その歩調はドスドスと地面を踏み鳴らすようで、明らかに機嫌が悪かった。
「ありがとう、レオン」
「……いえ」
レオンは相変わらず無表情だが、ノエルにはその感情の変化が分かる。
「ちょっとご機嫌斜めみたいね。どうかした?」
「いえ。……その」
レオンは言い淀んだ。
しかし、ノエルは白状するまで、レオンから目を背けないつもりらしい。
レオンは観念したように、小さく息をつく。
「……王子殿下が、羨ましいと思いました」
「何が?」
「……何の躊躇もなく、誰の妨害もなく、貴女の手を取ることが出来るのが」
「……嫉妬してるってこと?」
「……」
ノエルより先に、レオンのほうが目をそらしてしまった。
ノエルはクスクスと笑っている。
――そんな2人を、王子は陰険な目で見ていた。
「……ああ、殿下ですか」
ノエルと王子の婚約が決まり、本格的に交際が始まった。
……のだが、ノエルは一向に気乗りしない。
彼女が気のない返事を繰り返す中、王子はノエルの気を引こうとしている。
「ノエル、今度一緒に、どこか出かけないか?」
「いえ、外出はレオンと一緒なら1人でも行けますので」
「レオンと一緒って1人じゃないよね?」
王子は、ノエルの傍に控えるレオンを鬱陶しそうな顔で睨んだ。
レオンは無表情のまま、ただ付き従っている。
ノエルにとっては、レオンは自分の護衛であり、ついてくるのが当然だが、王子に説明する義理もない。
「そうだ、ノエルにプレゼント!」
「……この石は?」
「宝石だよ! 名前は知らないけど、国庫から持ってきた!」
「返してきてください」
王子のやらかしで、ノエルが泥棒呼ばわりされてはたまったものではない。
宝石を突き返すと、王子は渋々受け取った。
しかし、それで諦めるような王子ではない。
「じゃあ、ノエルに花をプレゼントしよう!」
そのへんに生えている花を摘んで、ノエルに手渡す。
……もしかして、この王子、相当の馬鹿では?
ノエルは苦笑いしながら花を受け取った。
「レオン、これ持ってて」
「はい」
王子に渡された花を、すぐにレオンに横流す。
レオンは重厚な漆黒の鎧の姿でタンポポを持っているというシュールな光景になった。
ノエルは思わず吹き出す。
「いいわね。似合ってる」
「そうですか」
なぜ、ノエルにプレゼントしたのに、ノエルとレオンの仲睦まじい姿に変換されるのか。
王子は苛立ちで赤面した。
王国最強の騎士がほしかったとはいえ、この光景を毎日見せつけられるのは我慢ならない。
「ノエル、今度いっしょに食事に行かないか?」
「え? わたくし、堅苦しいテーブルマナーはちょっと」
「未来の妃がそんなことでは駄目だよ。他の国と会食になったらどうするつもりだい?」
それはそう。正論である。
ただ、ノエルはそもそも王家に嫁ぐつもりがなかったのだから納得いかない。
王子は「僕がマナーを手取り足取り教えてあげる」と無理やりノエルの手を取った。
「殿下。女性に許可なく触れるのはいかがなものかと」
レオンが、ノエルの嫌がっている表情を見て察した。
2人の間に割って入り、止める。
王子はますます機嫌を損ねた。
「お前! 僕と婚約者の問題だぞ!」
「私はその婚約者の護衛騎士ですが」
「お前、生意気だな! 口を出すな!」
「殿下」とノエルが口を挟む。
「レオンがわたくしについているのは、国王陛下もお認めになられております」
王子は苦々しい顔で口をつぐんだ。
舌打ちをしながら、ノエルから手を離す。
王国最強の騎士レオンは、国王のお気に入りになっていた。
従順で忠実、おまけに強い。
王子もそれに文句を言えない。
王子は「じゃあ、また」と立ち去ったが、その歩調はドスドスと地面を踏み鳴らすようで、明らかに機嫌が悪かった。
「ありがとう、レオン」
「……いえ」
レオンは相変わらず無表情だが、ノエルにはその感情の変化が分かる。
「ちょっとご機嫌斜めみたいね。どうかした?」
「いえ。……その」
レオンは言い淀んだ。
しかし、ノエルは白状するまで、レオンから目を背けないつもりらしい。
レオンは観念したように、小さく息をつく。
「……王子殿下が、羨ましいと思いました」
「何が?」
「……何の躊躇もなく、誰の妨害もなく、貴女の手を取ることが出来るのが」
「……嫉妬してるってこと?」
「……」
ノエルより先に、レオンのほうが目をそらしてしまった。
ノエルはクスクスと笑っている。
――そんな2人を、王子は陰険な目で見ていた。



