そう、いつも通り退屈なパーティーなはずだった
猫撫で声で擦り寄ってくる、ケバくて香水臭い女達しかいなくてうんざりする
この後どうか自分と一夜を…
そんな女ばかりなのかと毎回呆れてしまう
こんな時はいつも【彼女】のことを思い浮かべながら相手をしていた
髪はオニキス、肌はパール、瞳はサファイヤ、そして唇はルビー
全てが宝石のように輝いていた
そんなビスクドールのような容姿からビスク様と呼ばれていた
彼女はこんなパーティーなんか来ないだろう
きっとあの男の相手を…
彼女の美しい姿だけを思い返していたはずなのに、毎回醜い知りたくなかった事実が邪魔をしてしまう
早くこんな時間終われ
そう考えることに徹していると、そこらじゅうから
ガシャン!
ガシャン!
ガシャン!
というグラスが割れる音と
キャー
という飲み物がかかった女性の悲鳴が聞こえた
一体なんの騒ぎだろうか?
「やーやー、悪いね~」
全くそう思ってはなさそうな声音と共に目に入ったのは、全ての元凶である憎い小太りの男だった
そもそも今回のパーティーは、彼の新しい相手を探すために開かれた胸糞悪いものだった
そして自分を含む見た目のいい男性陣は女性陣を誘い出す餌でしかなかった
「あちゃ~、男性陣みんなしてグラス落としちゃって~…まあ仕方ないか!で、女性陣のドレスも全滅っと、ああ、足元が悪いからそれ以上近づかないようにね、怪我なんかしたら大変だから!」
「わかりました」
その澄んだ声を聞いて心臓が止まるかと思った
聞き間違えるはずがない
が、恐る恐る視線を男から少し逸らすと、自分までグラスを落としそうになった
「まあ確かに今回のドレスかなり良いでしょ?ビスクはとにかく元がいいから極限までシンプルにした方が引き立つんだよね~だからビスクドールみたいなフワフワなドレスじゃなくて敢えて漆黒のホルターネックにしてみたんだ!で、髪はまとめただけ」
悔しいが自分でもそのスタイリングが1番【彼女】の良さを引き立てるだろうなと思った
パールの肌やサファイヤの瞳、ルビーの唇が一層引き立ち、オニキスの髪もドレスの光沢以上に輝いていた
「いつもありがとうございます、でもさすがに片付けた方がいいのでは…」
【彼女】が屈むとチラリと豊かな胸元が見えた
また、グラスの割れる音と女性の悲鳴がそこらじゅうから聞こえた
「はは、もうグラス割ってない人探す方が難しいでしょ、というかいる~?」
と、男と目が合った
「おお!さすが隆二!色男はビスク見ても動じないんだね~ちょっと片付け手伝ってくれない?誰も動けないと思うから」
「あ…ああ…わかりました」
隆二はグラスをテーブルに置き、ゆっくりと歩き出す
「気をつけてね」
【彼女】に優しく声をかけられて今度こそ心臓が止まるかと思った
「ビスク様こそ」
こんな当たり障りのない受け答えしかできない自分がもどかしい
「元さん、片付けが一段落したら一旦お開きにしませんか?皆さん着替えもしたいでしょうし」
「あー、まあ、せっかくのドレスがアルコール漬けじゃあね…それにしてもこのドレスにしたのは失敗だったかな~本当によく似合っているもんね」
とあの男が【彼女】の肩に手を置いた時、拾い集めていたグラスの欠片を投げつけそうになった
「ありがとうございます、でも今は一旦、ね?人前ですし」
彼女は肩に置かれた手を振りほどき、片付けを再開した
まるで「お楽しみは片付けてからにしましょうね」と子供を宥めるような優しい声音だった
そうしてパーティーはお開きになった
その夜
隆二は寝付けなくて庭へ出ていた
パーティーであの男の新しい相手が見つからなかったのなら、今頃は【彼女】と…
あの男の手が【彼女】のパールの肌に触れた時、そこだけ輝きが失われていたような気がした
きっと今は全身くすんでいるのだろう
「…こんなこと考えるだけ無駄か…」
少し冷えてきた
もう部屋に戻ろう
そう顔を上げると
「え…」
月明かりに照らされて昼間よりも艶やかなパールの肌
サファイヤの瞳は暗くても煌めいていて、オニキスの髪が静かに揺れて、ルビーの唇は驚いたように少し開いていた
「また会えるとは思わなかった…こんな時間に…珍しいね」
「あ、えっと、ビスク様はよく来るんですか?」
「今日はたまたま、かな、警備がかなり緩かったからそれで」
「…」
「…」
「…」
「それじゃあおやすみなさい」
【彼女】は切なげに踵を返したように感じてしまい
「え?」
ここで引き止めなかったら恐らくあの男の元に行くのだろう
咄嗟に後ろから抱きしめてしまった
「きゅ、急にどうしたの?」
【彼女】は優しく宥めるように言うわけでも、腕を振りほどこうともしなかった
「あ、えっと…」
完全に何も考えていなかった
というかこんなつもりじゃなかった
そもそも昼間のパーティーだってまさか参加するとは思わなかった
そもそもこんな-
「こ、こんなに可愛いのが悪いんですよ!」
「え?可愛い?」
これもこんなこと言うつもりでもなかった
【彼女】はビスク様と呼ばれるほど美しくて、宝石のようで
だからケースに入れて眺めるか、触れるとしても丁重に扱わなければならないはずだった
「ずっと見ていました、さっきのパーティーでも、可愛いなって…」
「可愛いかー、初めて言われたかも」
【彼女】はどこか寂しそうに笑う
そんなことないだろうと思ったが、パーティーでのスタイリング、ビスクドールという由来を思い出してどこか納得した
そしてそんなところも可愛かった
「なら俺何回でも言いますよ!可愛いって」
「あはは、ありがとう」
「可愛い」
「うん、ありがとう」
「可愛い…」
「ありがとう」
恐らく【彼女】には全く響いてないだろう
腕を振りほどかないのも、微動だにしないのも
まるで本当にビスクドールになってしまったかのようだった
「本当はね、今日のパーティーも参加する予定じゃなかったの、だけど参加することになって、君と会えて、またしばらく会えないんだろうなと思ったらこんな所で再会して抱き締めれて…可愛いって言われて夢みたい」
【彼女】の手が隆二の手をそっと握る
「でもこうやってちゃんと握れるから夢じゃないんだよね、やっと実感してきたよ」
今度は包み込むよう握り締める
「夢みたいなのは…俺の方ですよ…」
まるで夢のような現実
しかしこんな時間は長くは続かない
「今日は本当にありがとう、それじゃあまたね」
【彼女】が勢いよく腕を振りほどき、逃げるようにその場を後にしようとする
「待って…」
「…っ」
咄嗟に引き寄せてキスをした
「私もずっとこうしたかったの」
今度は【彼女】の方からキスされた
「いつも可愛い女の子たちに囲まれてチヤホヤされてたじゃない」
「え?いやそんなビスク様こそ」
「待って!ゆかりって呼んで…」
「ゆ、かり…」
「ありがとう、もう誰も呼んでくれないかと思った」
「本名ですか?初めて知りました」
「あはは、そうだよね、私はビスクドールで、綺麗だって遠巻きには見て貰えるけど誰も近づこうとはしない」
「いやそれはゆ、ゆかりさんよりも元さんの影響も大きいですよ」
【彼女】は彼専用のビスクドールである
だから遠巻きに見るべきだ
これが周囲の暗黙の了解だった
「そうなのかな、でも結局元さんにとっても私はビスクドールだったよ、綺麗だって着飾って貰って、でも恋人らしいことは一切しなくて…」
「いや、そんなはずは…」
厳重にロックされたゆかりの部屋にあの男が入っていくのを何回も見たことがある
「今日も綺麗だね、それじゃあおやすみはいつも言ってくれたよ、でもそれだけ」
「…」
「そのあとは別の女の人の部屋かな、多分今もそう…ね?ビスクドールでしょ?」
「じゃ、じゃあさっきのキスは…」
「うん…初めてだったよ、なんて信じられないよね」
「いや、疑っているとかじゃなくて…ただ…嘘でしょ…」
「でも実際証明できるものが何も無いから、こんなこと言われても困るよね」
「…ありますよ」
「え?そうなの?」
「はい、ゆかりさんが嫌じゃなければですけど…俺の部屋に行きませんか…?」
「それって…」
こうして2人は隆二の部屋へ向かった
「あっ…」
自室へ戻るとこれまでの感情が押し寄せてきて、誤魔化すように激しくキスをする
「あ、待って…明るすぎ…あっ…」
首筋まで真っ赤になって俺の胸を押す
それでも止まれずそのままベッドに押し倒してしまった
「ま、待って!!」
かなり強い口調で言われてここで理性を取り戻した
「すみません、俺…夢中になっていて…」
「私の方こそ…」
「辞めておきますか?」
「ううん、私がしたいの」
そういうと電気のスイッチを切った
部屋が暗くなり【彼女】の姿が見えなくなる
「だって私のことを可愛いって、ゆかりって言ってくれたのはあなただけだもの」
猫撫で声で擦り寄ってくる、ケバくて香水臭い女達しかいなくてうんざりする
この後どうか自分と一夜を…
そんな女ばかりなのかと毎回呆れてしまう
こんな時はいつも【彼女】のことを思い浮かべながら相手をしていた
髪はオニキス、肌はパール、瞳はサファイヤ、そして唇はルビー
全てが宝石のように輝いていた
そんなビスクドールのような容姿からビスク様と呼ばれていた
彼女はこんなパーティーなんか来ないだろう
きっとあの男の相手を…
彼女の美しい姿だけを思い返していたはずなのに、毎回醜い知りたくなかった事実が邪魔をしてしまう
早くこんな時間終われ
そう考えることに徹していると、そこらじゅうから
ガシャン!
ガシャン!
ガシャン!
というグラスが割れる音と
キャー
という飲み物がかかった女性の悲鳴が聞こえた
一体なんの騒ぎだろうか?
「やーやー、悪いね~」
全くそう思ってはなさそうな声音と共に目に入ったのは、全ての元凶である憎い小太りの男だった
そもそも今回のパーティーは、彼の新しい相手を探すために開かれた胸糞悪いものだった
そして自分を含む見た目のいい男性陣は女性陣を誘い出す餌でしかなかった
「あちゃ~、男性陣みんなしてグラス落としちゃって~…まあ仕方ないか!で、女性陣のドレスも全滅っと、ああ、足元が悪いからそれ以上近づかないようにね、怪我なんかしたら大変だから!」
「わかりました」
その澄んだ声を聞いて心臓が止まるかと思った
聞き間違えるはずがない
が、恐る恐る視線を男から少し逸らすと、自分までグラスを落としそうになった
「まあ確かに今回のドレスかなり良いでしょ?ビスクはとにかく元がいいから極限までシンプルにした方が引き立つんだよね~だからビスクドールみたいなフワフワなドレスじゃなくて敢えて漆黒のホルターネックにしてみたんだ!で、髪はまとめただけ」
悔しいが自分でもそのスタイリングが1番【彼女】の良さを引き立てるだろうなと思った
パールの肌やサファイヤの瞳、ルビーの唇が一層引き立ち、オニキスの髪もドレスの光沢以上に輝いていた
「いつもありがとうございます、でもさすがに片付けた方がいいのでは…」
【彼女】が屈むとチラリと豊かな胸元が見えた
また、グラスの割れる音と女性の悲鳴がそこらじゅうから聞こえた
「はは、もうグラス割ってない人探す方が難しいでしょ、というかいる~?」
と、男と目が合った
「おお!さすが隆二!色男はビスク見ても動じないんだね~ちょっと片付け手伝ってくれない?誰も動けないと思うから」
「あ…ああ…わかりました」
隆二はグラスをテーブルに置き、ゆっくりと歩き出す
「気をつけてね」
【彼女】に優しく声をかけられて今度こそ心臓が止まるかと思った
「ビスク様こそ」
こんな当たり障りのない受け答えしかできない自分がもどかしい
「元さん、片付けが一段落したら一旦お開きにしませんか?皆さん着替えもしたいでしょうし」
「あー、まあ、せっかくのドレスがアルコール漬けじゃあね…それにしてもこのドレスにしたのは失敗だったかな~本当によく似合っているもんね」
とあの男が【彼女】の肩に手を置いた時、拾い集めていたグラスの欠片を投げつけそうになった
「ありがとうございます、でも今は一旦、ね?人前ですし」
彼女は肩に置かれた手を振りほどき、片付けを再開した
まるで「お楽しみは片付けてからにしましょうね」と子供を宥めるような優しい声音だった
そうしてパーティーはお開きになった
その夜
隆二は寝付けなくて庭へ出ていた
パーティーであの男の新しい相手が見つからなかったのなら、今頃は【彼女】と…
あの男の手が【彼女】のパールの肌に触れた時、そこだけ輝きが失われていたような気がした
きっと今は全身くすんでいるのだろう
「…こんなこと考えるだけ無駄か…」
少し冷えてきた
もう部屋に戻ろう
そう顔を上げると
「え…」
月明かりに照らされて昼間よりも艶やかなパールの肌
サファイヤの瞳は暗くても煌めいていて、オニキスの髪が静かに揺れて、ルビーの唇は驚いたように少し開いていた
「また会えるとは思わなかった…こんな時間に…珍しいね」
「あ、えっと、ビスク様はよく来るんですか?」
「今日はたまたま、かな、警備がかなり緩かったからそれで」
「…」
「…」
「…」
「それじゃあおやすみなさい」
【彼女】は切なげに踵を返したように感じてしまい
「え?」
ここで引き止めなかったら恐らくあの男の元に行くのだろう
咄嗟に後ろから抱きしめてしまった
「きゅ、急にどうしたの?」
【彼女】は優しく宥めるように言うわけでも、腕を振りほどこうともしなかった
「あ、えっと…」
完全に何も考えていなかった
というかこんなつもりじゃなかった
そもそも昼間のパーティーだってまさか参加するとは思わなかった
そもそもこんな-
「こ、こんなに可愛いのが悪いんですよ!」
「え?可愛い?」
これもこんなこと言うつもりでもなかった
【彼女】はビスク様と呼ばれるほど美しくて、宝石のようで
だからケースに入れて眺めるか、触れるとしても丁重に扱わなければならないはずだった
「ずっと見ていました、さっきのパーティーでも、可愛いなって…」
「可愛いかー、初めて言われたかも」
【彼女】はどこか寂しそうに笑う
そんなことないだろうと思ったが、パーティーでのスタイリング、ビスクドールという由来を思い出してどこか納得した
そしてそんなところも可愛かった
「なら俺何回でも言いますよ!可愛いって」
「あはは、ありがとう」
「可愛い」
「うん、ありがとう」
「可愛い…」
「ありがとう」
恐らく【彼女】には全く響いてないだろう
腕を振りほどかないのも、微動だにしないのも
まるで本当にビスクドールになってしまったかのようだった
「本当はね、今日のパーティーも参加する予定じゃなかったの、だけど参加することになって、君と会えて、またしばらく会えないんだろうなと思ったらこんな所で再会して抱き締めれて…可愛いって言われて夢みたい」
【彼女】の手が隆二の手をそっと握る
「でもこうやってちゃんと握れるから夢じゃないんだよね、やっと実感してきたよ」
今度は包み込むよう握り締める
「夢みたいなのは…俺の方ですよ…」
まるで夢のような現実
しかしこんな時間は長くは続かない
「今日は本当にありがとう、それじゃあまたね」
【彼女】が勢いよく腕を振りほどき、逃げるようにその場を後にしようとする
「待って…」
「…っ」
咄嗟に引き寄せてキスをした
「私もずっとこうしたかったの」
今度は【彼女】の方からキスされた
「いつも可愛い女の子たちに囲まれてチヤホヤされてたじゃない」
「え?いやそんなビスク様こそ」
「待って!ゆかりって呼んで…」
「ゆ、かり…」
「ありがとう、もう誰も呼んでくれないかと思った」
「本名ですか?初めて知りました」
「あはは、そうだよね、私はビスクドールで、綺麗だって遠巻きには見て貰えるけど誰も近づこうとはしない」
「いやそれはゆ、ゆかりさんよりも元さんの影響も大きいですよ」
【彼女】は彼専用のビスクドールである
だから遠巻きに見るべきだ
これが周囲の暗黙の了解だった
「そうなのかな、でも結局元さんにとっても私はビスクドールだったよ、綺麗だって着飾って貰って、でも恋人らしいことは一切しなくて…」
「いや、そんなはずは…」
厳重にロックされたゆかりの部屋にあの男が入っていくのを何回も見たことがある
「今日も綺麗だね、それじゃあおやすみはいつも言ってくれたよ、でもそれだけ」
「…」
「そのあとは別の女の人の部屋かな、多分今もそう…ね?ビスクドールでしょ?」
「じゃ、じゃあさっきのキスは…」
「うん…初めてだったよ、なんて信じられないよね」
「いや、疑っているとかじゃなくて…ただ…嘘でしょ…」
「でも実際証明できるものが何も無いから、こんなこと言われても困るよね」
「…ありますよ」
「え?そうなの?」
「はい、ゆかりさんが嫌じゃなければですけど…俺の部屋に行きませんか…?」
「それって…」
こうして2人は隆二の部屋へ向かった
「あっ…」
自室へ戻るとこれまでの感情が押し寄せてきて、誤魔化すように激しくキスをする
「あ、待って…明るすぎ…あっ…」
首筋まで真っ赤になって俺の胸を押す
それでも止まれずそのままベッドに押し倒してしまった
「ま、待って!!」
かなり強い口調で言われてここで理性を取り戻した
「すみません、俺…夢中になっていて…」
「私の方こそ…」
「辞めておきますか?」
「ううん、私がしたいの」
そういうと電気のスイッチを切った
部屋が暗くなり【彼女】の姿が見えなくなる
「だって私のことを可愛いって、ゆかりって言ってくれたのはあなただけだもの」

