異世界から来た魔法使いで何が悪い?

 『不合格』
 お父さんのパソコンに映し出された、3文字の漢字。
 リビングでパソコンを囲む私と両親はその言葉を見て固まってしまう。
 「う、そ」
 私、杠葉 舞(ゆずりは まい)は、中学受験に、失敗しました。
 後ろにいた両親は、私を見る。
 「……舞。」
 「まいちゃん。」
 「何でよ。」
 何が言いたげな両親をさえぎって私は無意識に声を発する。
 「なんで私は報われないの……。てっ、手応えもあって、たっ、たくさん努力して……、い……けると、思ったのに……っ。」
 ゆっくりと、ゆっくりと私は頭に血がのぼっていくのを感じる。
 そして、私はついに……。
 「何でよ! 私は、いっつも報われない! 何でって! どうして神は私を導いてくれないの!!」
 感情が爆発し、思わずグワッと立ち上がる。
 「舞!」
 「まいちゃん! 落ち着いて!」
 「落ち着けるわけないじゃん!」
 両親は、部屋に戻ろうとする私を止めようとしたが、その手を振り払い、二階にある自分の部屋へ早歩きで向かった。

 二階、私の部屋。
 部屋に入ると、私はベッドにダイブした。
 そして大好きなアニメの絵が入ったクッションをギュッと抱きしめながら。
 (どうしてよ……。)
 私はいつの間にか涙を流していた。
 両親に初めてあんな言い方してまで振り払ったのは、泣いてるのを見られたくなかったから。
 ……いっつもこうだ。
 私は昔からこうなんだ。
 たとえどんなにも努力しても、報われることはない。
 前のお父さんだって言ってた。
 『努力はどれだけしても、才能には勝てない』……。
 その通りだね、お父さん。
 …………ほんっとにその通りだ。

 私は、どんなに努力しても報われない―――。


 今から四、五年前。
 ……私が、この世に来る前のお話。

 私は、ここではない異世界から来た。

 私は豪邸のメイドだった。
 この世界の年齢で言う……小学生のメイド。でも、ただのメイドではなく……。
 ――――――魔法使い。
 私は専属治癒魔法で、豪邸の誰かが怪我をしたり、私と同じ魔法使いの攻撃魔法専属のメイドや執事が、魔物によって怪我を負わされた時に、私たち治癒魔法専属メイドが活躍する。
 それが、魔法使い兼メイドの仕事だったんだ。
 だが、ある日のこと。

 私は豪邸の大きな鏡がある物置部屋に入ってしまったんだ―――。

 物が散らかっている物置部屋だったもので、私メイドは、ついつい掃除をしようと誰も出入口したところを見たことない物置部屋に入ってしまった。
 そして、奥の奥にあった鏡に手を伸ばしてしまう―――。
 なぜなら、部屋はホコリや汚れでいっぱいなのに、鏡だけ綺麗だったから。
 どうしてここまで綺麗に保たれているのか。
 私は気になって手を伸ばしてしまった。
 そして私は、

 ―――異世界……、今ここに、飛ばされてしまったというわけだ。

 つまり私は、この国の人間ではない。
 魔法の使える異世界人ということになるんだ。
 私が受験しようとした学校も、『朝の歩魔法学校(あさのほまほうがっこう)』。
 合格した魔法使いだけが通えるという伝説の学校。
 私みたいに、異世界からここ、現代に迷い込んでしまった人のことを『迷い人(まよいびと)』といい、そう少なくないらしい。
 そして異世界で魔法使いの子供があの学校に通えるのだ。
 ただし、優秀な魔法が使えなければならない。
 そしてもちろん受験が必要。
 私はその、受験に落っこちた。
 そうだよね。私は……。

 ――――魔法の才能の欠けらも無い、ただの報われない努力家なんだから……。