【試し読み】転生公女は任期満了に伴い家族の元に帰らせていただきます~役立たずと捨てられましたが、『星詠み』は国を守る希少スキルですよ?~

 ――わたしにとって、運命の日がやってきた。

 わたしはウィーデル国の王太子チェスターの婚約者であるが、妃教育や公務などが入っていない時は、「星詠宮」と名がつけられた塔のてっぺんの部屋で過ごした。
 ウィーデル国の王侯貴族はわたしを王太子の婚約者にと望んだけれど、それはあくまで、国力増強のための「兵器」としてだった。
 ゆえに、「兵器」は黙って仕事をしろといわんばかりに、星のよく見えるこの塔の部屋が与えられ、何か気になる未来が見えたならすぐさま報告しろと言われていた。
 監視がつけられ、用がなければ部屋から出られないこの生活は、半(なか)ば幽(ゆう)閉(へい)と同じである。
 あちらはわたしが逃げることを恐れていたのかもしれないが、このやり方は値打ちものを宝物庫に収めて厳重に鍵をかけるようなものだろう。宝物庫に収められる「もの」が何を思うのか。「もの」の感情に関してはきれいさっぱり無視されている。
 婚約者のチェスターもチェスターで、わたしのことは自分の治(ち)世(せい)を安定させる便利な道具くらいにしか思っていない。
 公務などで顔を合わせることはあっても、わたしとの仲を深めるつもりはないようで、その態度はいつも素っ気なかった。
 まあ、わたしもチェスターに恋をしているわけではないし、それどころかいまだに胸の中には初恋の相手が居座っているくらいなので、彼の態度は気にならない。
 ただ、この調子なら結婚後も仮面夫婦だなと思うくらいだ。