【試し読み】転生公女は任期満了に伴い家族の元に帰らせていただきます~役立たずと捨てられましたが、『星詠み』は国を守る希少スキルですよ?~

 わたし――シュトグリナ公国の公女ジーナは、「予言者スキル」持ちだった。
 シュトグリナ公国はかつてウィーデル国の支配下にあった――領地の一部だったところだ。
 その昔シュトグリナ公爵領だった場所が独立し、今は公国を名乗っているが、ウィーデル国との関係が完全に切れたわけではない。
 支配からは離れたが、力関係でいえば、かつての宗主国であるウィーデル国の方が上に来る。
 ウィーデル国はもちろんシュトグリナ公国を下に見ているし、何ならいつでも攻め入りその国土を奪い取ることができると思っているだろう。
 そんな国に「予言者スキル」持ちが現れた。
 しかも、公女だ。
 当時大公夫妻の間にはわたしひとりしか子がおらず、男児が生まれなければもれなくわたしが大公の座を継ぐだろう。
 ウィーデル国は焦った。
 わたしが世継ぎの公女として正式に発表されれば手出しができなくなる。
 今はまだ、次の子が生まれる可能性があるから正式に世継ぎであるとは発表されていなかった。だが、十年、十五年と次の子が誕生しなければジーナは世継ぎとして発表されるだろう。発表されたあとで男児が生まれようと、すでに決定事項として諸外国に発表してしまえば、その立場が覆ることはまずない。
 だから――急いで抱え込むことにしたのだ。
 ウィーデル国の王太子の、婚約者として。
 わたしにスキルが発現したのは十二歳の時。
 その半年後、ウィーデル国から婚約の打診がお父様の元に入った。
 その時点でお父様とお母様にはわたし以外の子はいなかったけれど、ウィーデル国からの圧力に、お父様は屈さざるを得なかった。
 小国であるシュトグリナ公国は、自給率の低い国だ。食糧などは特に他国からの輸入に頼っている部分も大きい。それらを止められると、国が立ち行かなくなるのである。
 こうしてわたしが十三歳の時に婚約がまとめられ、十四歳の時に結婚もまだだというのに「妃教育」という建前の下、わたしは強引にウィーデル国に居を移された。
 そして今。わたしは明日、十八歳になる。
 ウィーデル国の王太子チェスターとの結婚ももうじきだろう。彼は今、十九歳。確か、チェスター王太子が二十歳になる年に結婚すると発表されていた。