後ろの魔王様

ホームルームが終わり、英くんは「絶対待っててよォ」と念を押してから呼び出し先の旧校舎へ向かった。

少しして、私も陽奈を教室に残して旧校舎へ……。


化学実験室や視聴覚室など、普段使わない教室が並ぶ旧校舎は少し悪いグループたちの溜まり場になっている。

うちの学校には暴走族グループもあるらしく、一般生徒はあまり寄りつかない。

私も滅多に行かないから、きょろきょろと辺りを見渡しながら英くんの後を追う。


ちょうど階段の下を歩いていたところで、上から声が聞こえてきた。


「なぁ英……そろそろ返事聞かせてくれよ」

「だからァ、ヤだって言ってんじゃん」


英くんの間延びした、でもいつもより低い声。

どうやら英くん、ご機嫌ナナメっぽい……。


「お前にはそれ相応のポジションを用意するつもりだ」

「いらねーしィ、キョーミねーもん」

「総長直々に言ってくれてんだぞ!」

「だからァ、オレ断ってんじゃん。人に頼まれてする喧嘩とかつまんねー。もォ帰っていい?」


律儀に英くんは「この後ここちゃんとクレープ行くんだけどォ」と、この後の予定まで話してしまっている。

その声がどこかウキウキしていて、楽しみにしてくれているのかと思うと胸がむず痒くなった。


「お前、あの地味な女について歩くだけでいいのか?」


突然、話の矛先が私に向き、思わず身体を縮こめる。

見えてない、見えてないんだけれど、なんとなく……。


「地味女の後ろよりも、総長の後ろ歩く方がカッケーぜ?」

「ア゛?」