後ろの魔王様

「『魔王』がまたやってんぞ!」

「小鳥遊(タカナシ)さん呼んできて!」

「さっき急いで行ってくれたらしいよ!」


・ ・ ・


私──小鳥遊心(ココロ)は大きめの上履きをパタパタ鳴らしながら、渡り廊下を駆け抜ける。

足にまとわりつく長いスカートも、ずり落ちてくる眼鏡も気にせず裏庭へ向かうと、数人の男子生徒が地面に倒れていて、ちょうど英(ハナブサ)くんが最後の一人を沈めているところだった。


もうっ!
喧嘩しないでってあんなに言ってるのに!


ぜーはー、と息を整えていれば、私の姿を見つけた英くんがさっきまでの無表情とは打って変わって、とろぉんと目尻を下げ、私の近くへやって来る。

途中、倒れてる男子生徒を蹴飛ばしてたように見えたけれど……見なかったことにしておこう。


「ここちゃんだ!迎えに来てくれたのォ?」

「違う!なんで喧嘩したの!?」


私がビシィッ!英くんに向けて指をさすと、にこにこ笑って自分の人差し指をくっ付けてくる。

「ピトッ」なんて言いながら楽しそうにしているから、ぺいっと指を払っておいた。
まったく、この男は!


「無駄な喧嘩はしないって約束したよね?」

「無駄な喧嘩じゃないしィ。コイツら、ここちゃんの悪口言ってたからぶっ飛ばしただけだもん」

「どんな悪口?」

「オレの『ご主人様』にしては貧弱とかァ」

「ただの事実!」


しかも『ご主人様』ってナニ?

私、英くんの『ご主人様』になったつもり無いんだけれども!?


「ここちゃん、オレの『ご主人様』じゃん?オレ、ここちゃんの言うことならなんでもきくしィ」

「喧嘩全然やめてくれないけどね?!」

「これはヒツヨウな喧嘩なのォ〜」