赤い月夜の甘い恋



「本当にいないの?好きな人」

「いないよ」

 昼休み。

 教室の後ろの方の席で、親友の芽衣(めい)と話していた。

「え〜……せっかく可愛いのに」

「可愛くないってば」

 芽衣は恋バナが大好きで、よく私にも恋の話題を求めてくる。

 恋をしてと言われても、私にはさっぱりわからなくて、いつもみたいにこんなやり取りをする。

「好きな人……ねぇ」

 そんな人本当に現れるのだろうか?

 私には想像できない。

 よく、物語の中では、運命の人だとか、好きで好きでたまらないだとか、そんなことを言うけど、そんなのはただの幻想で、実際はきっとそんなことない。

「鈍感ちゃんなんだから」

「ん?なんか言った?」

「なんでもない」

 芽衣の言葉に首を傾げつつ、ノートを開く。

 鉛筆を持って、適当にイラストを描いていく。

 この時間が一番好き。

「それより、ハロウィンパーティーどうすんの?」

「今年も裏方やろうかな」

「えぇ……もったいな。今回こそは出ようよ」

「……わかったよ」

 なかなか断れない性格なのが、私の悪いところ。

 前回は、芽衣の衣装を作ったけど、今回は私の分も作らなきゃいけないのかな……

 それだとちょっと大変かもなぁ……

 あと一ヶ月半あるかないかくらいだし。

「あっ、あたしの衣装りーくんに作ってもらうから、恋葉(こいは)は心配しないで」

 そんな私の心の声を読んだかのようにそういう。

 りーくんとは、芽衣の彼氏で、家庭科部のエースらしい。

 私はお母さんの影響で作れるだけだし。

「わかった」

 自分のって言われても困るかもなぁ……

 私あんまり似合わないし。

 どうしよう。

 お母さんにでも作ってもらおうかな……

 あっ、お姉ちゃんに作ってもらおう。

 芽衣は、りーくんに呼ばれたらしく、席を離れる。

 私は、次の授業の準備を始めた。