嘘つきな3人

◇

仕事を終えて、階段を下りながらクロッカスを見ると、店内はほとんど満席だった。久我さんはカウンターと客席のあいだを何度も行き来している。

店の前を通り過ぎようとして、足が止まった。

久我さんがトレーを持ったまま、レジへ向かうお客さんに気づく。けれど別のテーブルからも声をかけられて、そちらへ向きを変えた。

少し迷ってから扉を開けると、久我さんはすぐに私に気づく。

「美作さん。ごめん、アルバイトの子が急に休みになっちゃって……席片付けるから少し待っててくれる?」

「あの、私、手伝いましょうか」

久我さんは、私の言葉にきょとんとした顔をする。

「え……いいの?仕事終わりでしょ?疲れてない?」

「大丈夫です」

少し考える様子を見せた久我さんだけれど、やがて表情が緩んだ。

「じゃあ、お願いしてもいい?」

はい、返事をすると、久我さんはカウンターの奥からエプロンを一枚取り出した。

「これ、使って」

勢いで言ってしまった申し出に、内心自分で戸惑いつつ、受け取ったエプロンを身につけた。