嘘つきな3人


「紅ちゃんの手、あったかい」

伊久間くんが少し掠れた声で呟いた。
やがて、もう片方の手が頬に触れる。


「……紅」


呼び方が変わる。
触れるだけのキスをして、少し離れる。
そして、もう一度唇が重なった。

その夜の奏斗くんは、いつもより少し甘かった。
何度も名前を呼んで、触れるたびに私の顔を見る。


「紅、こっち見て」


言われるまま顔を上げると、目が合った。いつだって優しい。けれど今日は、確かめるみたいに何度も私を見つめていた。

「奏斗くん……今日、どうしたの?」

聞くと、奏斗くんは少しだけ笑った。

「なにが?」

うまく言葉にできずにいると、頬に触れていた手が髪を撫でる。

「紅がかわいいからじゃない?」

「そういうのじゃなくて……」

「じゃあ、どういうの?」

「……分かんない」

奏斗くんは小さく笑う。

「分かんないなら、いいじゃん」

耳元でそう言って、もう一度私を抱き寄せた。