送ってから、画面を見つめたまま待つ。いつもならすぐにつく既読が、今日はなかなかつかない。
……やっぱり寝てるのかもしれない。
そう思ってスマートフォンを置こうとしたとき、画面が光った。
『起きてる』
しばらくして、アパートの外階段を登ってくる音がした。近づいてきたそれが、私の部屋の前で止まる。……伊久間くん、部屋にいなかった?
ベッドを抜け出して玄関へ向かい、扉を開けた。
「伊久間くん、外にいたの?」
「ちょっとね」
そう言って、いつものように笑った。
私が身体をずらすと、伊久間くんはその隙間から部屋へ入った。
ベッドのそばに座った伊久間くんの手が目に入る。
夕方見たときよりも、指先が赤い。
「手、見せて」
差し出された手を、両手で包む。
思っていたより、ずっと冷たい。
「……すごく冷たい」
「外いたからね」
「なにしてたの?」
ほんの少し間があった。
「ちょっと歩いてた」
「こんな寒いのに?」
「考え事」
それ以上は聞かなかった。
冷えた指先を包んだまま顔を上げると、伊久間くんと目が合う。
しばらく見つめ合ったあと、伊久間くんの指がゆっくり動いて、私の手を握り返した。
