事務所を出て、いつもの道を並んで歩く。
外へ出ると、思っていたよりずっと風が冷たかった。
「ほんとだ。風花舞ってるね」
「やばいでしょ」
「伊久間くん、こんな寒い中ずっと外にいたの?」
仕事だからね、と言って笑う伊久間くん。
いつもならもう少しくだらない話をするのに、今日は伊久間くんの口数が少ない。
信号待ち、隣にいる伊久間くんを見るとポケットに手を入れている。
「……まだ手、冷たい?」
「もう平気だよ」
そう言うけれど、ポケットから手を出す気はないらしい。
アパートに着いて、隣り合った扉の前で立ち止まる。
「じゃあ、紅ちゃんおやすみ」
「うん。あったかくしてね」
ありがとう、と言って伊久間くんは自分の部屋へ入っていった。
私も部屋に入り、シャワーを浴びた。夜ご飯は食べるのが面倒だったから、すぐにベッドに潜り込んだ。
けれど、なかなか眠気は来なかった。
今日は疲れていそうだったし、もう寝ているかもしれない。そう思って、一度はスマートフォンを伏せる。
それでもしばらくして、もう一度手に取った。
『起きてる?』
