*稀紗side*



とうとうやってきたこの日。



頭から煙が出るほど考えて選んだ服に身を包み、私は待ち合わせ場所まで歩いた。



拓也は午前中約束があるらしいから、待ち合わせ場所は駅だ。



辺りをキョロキョロ見渡しながら探し歩く。



「おい。」



愛しい声に振り返る。



「拓也!」



拓也が手招きして立っていた。



「自分で歩いて来てくれないの?」



むくれながら抗議すると、澄ました顔で瞬殺された。



「俺の方が改札に近いもん。」


「…。」



確かに理屈はそうかもしれないけど。



ちょっとは女の子を気遣うとかないのかな。