私の彼氏と野球と私

「加代〜。
一緒に帰ろ?」


「いいよ。
私も順平に言われたから。」



加代の隣に立って、私は歩き出した。



「ねぇ、稀紗。
デートスポットってどこがいい?」


「えっ!?」



私は加代に聞かれて固まった。



今、一番の悩みが“デート出来てない”なのに。



「どうしたの稀紗。」



加代が固まった私を慌てて揺すった。



「わかんない…。」


「えっ?」


「デート、一回しかしてない。」


「はいぃぃっ!?」



加代は辺りによく響く甲高い声で叫んだ。



キーンとなった耳を押さえている私を激しく揺さぶり、問い詰めた。



「一回!?
付き合ってから一回!?」


「うん。
でも拓也野球で忙しいから。」


「んなもん関係ないわよ!
私、小林君に怒鳴ってくる。」



ギョッとして私は加代にしがみついた。



「ダメダメ!」