私の彼氏と野球と私

「やだ。」



泣くまいとしているのか、声が震えている。



「帰れよ。」



声を荒げると、稀紗はまたビクッと身体を強張らせる。



「怒らないでよ。」



俺が黙っていると、稀紗は小さな声で続けた。



「さっきのことは、気にしないで…。
だから…。」



自分を責めないでね?



ほとんど聞こえないような声で稀紗が言った。




でも、そんなの、無理だ。


気にしないようなら、稀紗を大事に思えてないんだよ。



「お願い、離れないで?」



思ってもなかった言葉がきた。