私の彼氏と野球と私

「何が?」


「走るのが。」


「それはまたなんで?」



稀紗はう〜、と唸って顔を上げた。 



「相手が学年で一番速いって言われてる人と、陸上部の人なの。」



みんなは慰める言葉が無いらしく、それぞれ何か呟きながら俺を見た。



「俺?」


「彼氏だろ?」



苦笑いで前に押し出された。



「あ〜。」



頭を掻きながら、しゃがみこむ。



「別にいいだろ。
もしかしたら相手こけてくれるかもだし。」



ホント?と稀紗は上目遣いに俺を見た。



ドキッ



俺は必死に平静を装って、頷いた。