私の彼氏と野球と私

「お前、どこ行ってたんだよ!」



肩を掴むと、痛がったから離す。



稀紗は怯えたように首をすくめた。



「連絡くらい…。」



ハッとして口をつぐむ。



稀紗の頬に、涙の跡がついていた。



「稀紗?」



声をかけると、今まで俯いていた稀紗が俺にしがみ付いて来た。



「取り敢えず、帰るぞ。」

「嫌だ…!」



小さな擦れた声でせがまれ、俺はため息をついた。



「わかった。
話聞くから、俺の家に行くぞ。」


「でも。」


「寛明に頼んで親に来ないように言ってもらうから。」



やっと稀紗は頷いて歩き出した。