私の彼氏と野球と私

止まったとたん、俺は稀紗を引っ張って抱き締めた。



耳元で稀紗の息を呑む音が聞こえた。



「別にみんなにお前と付き合ってるのを知られたくなかったワケじゃない。
ただ冷かされたりして練習に差し支えるのが嫌だったんだ。」



稀紗は何も言わない。



「ちゃんと好きだよ。
俺も恥ずかしかったし、あんな風になった。
ゴメン。」



ギユッと抱くと、稀紗も手を回した。



「拓也に嫌われたかもって、怖かった。」


「アホかお前は。
今年で16年だっけ?
そんな長く一緒にいるのに、ずっと好きだったんだぜ?」



稀紗は腕の中でゴメンと言った。