俺にできることは何もない。
それでも
聞こえるはずのない一ノ瀬にひたすら声をかけ続けていた。
「一ノ瀬大丈夫だ。
辛いよな。でも助かる。安心しろ」
根拠のない言葉を永遠と並べていた。
「一ノ瀬さん!」
そこには見たことのない先生が立っていた。
救急の先生だろうか。
ここは寮が広い分、一般以上の保健設備が備わってる。
だからこうして救急の人が助けに来てくれた。
「ストレッチャーに乗せるから、ちょっと動くよー」
「3、2、1。はい。頑張ったね。もう大丈夫だよ」
そう言ってストレッチャーに抱えられて一ノ瀬は行ってしまった。
あたりを見渡すとあの男も消えていた。
「・・・・伊良皆。
ありがと」
伊良皆がいなかったら俺、救えるはずの一ノ瀬の命を捨てちゃっていたかもしれない。
一ノ瀬が苦しんでるのに、感情的に男に詰め寄ってたって最低だ、俺。
それにあそこで男を刺してたら、どうなっちゃってたかわからない。
「おう。」
・
・
・
沈黙が流れる。
少し気まずくんなってその場を離れようとしたとき、
「・・・あのさ、お前が一ノ瀬刺したんじゃないよな、?」
ありえないことを聞いて来た。
「なわけないだろ」
でも、その時ナイフを持って男を詰めていたのは俺。
そのナイフに付着した一ノ瀬の血。
俺が刺したように見えてもおかしくない。
そう、だよな。

