値引きパンを頬張っていたら御曹司に一目惚れされました

 休憩に入るなり、水野(みずの)瑠菜(るな)は店内のパン売り場へ直行した。

「あ、まだ残ってる」

 目当てのものを見つけて、思わず頬が緩む。

 ハナザキ製パンの菓子パン。
 昨日までは定価で並んでいたそれに、今日は〝三割引〟のシールが貼られている。

(ラッキー)

 迷わずひとつ手に取った。

 別に、定価で買えないわけではない。
 けれど同じものなら、少しでも安く買えたほうが嬉しいし、何よりこのまま売れ残って捨てられてしまうのはもったいない。

「おばあちゃん、うち、休憩行ってくるね」
「はいはい。ゆっくりしておいで」

 祖母へ声をかけて店を出る。

 向かったのは、店から歩いて数分のところにある小さな公園だった。

 瑠菜が住む穂刈里(ほかりざと)は、田舎だ。

 駅から少し離れれば田畑が広がり、昼間だというのに人通りも少ない。
 公園にも遊んでいる子どもの姿はなく、草も生い茂り気味で、聞こえてくるのは風に揺れる木々の音くらいだった。

 いつものベンチへ腰を下ろし、買ったばかりのパンを袋から取り出す。
「いただきます」
 大きく口を開けて、ぱくり。

 ふわりとしたパン生地と、中に挟まれた甘いクリーム。
(んー、美味しい)
 三割引で買えたと思えば、美味しさも三割増し――いや、それ以上だ。

 もうひと口。
 幸せを噛み締めるように頬張って――ふと、気づいた。

(……ん?)