あのとき雫が話してくれた、テレビ自体持っていないということや、俺のドラマを見るために買ったということが、今聞いた話と一緒になって、頭の中に浮かんでくる。
あのときは、それだけの話だと思ってたのに、今は少し違って聞こえる。
「でもね……湊のドラマを見るために、テレビ買ったとき、正直に言えば、めちゃくちゃ勇気いったんだ」
テレビを買うことなんて、普通なら迷うほどのことじゃない。店にいって、気に入ったものを選んで、家に置けばそれで終わる。けど雫にとっては、十年避け続けてきたものを、もう一度自分の生活の中に置くということだったのだと思う。
「十年くらい見てなかったから、また置いても大丈夫かなって、買う前は思ったし」
そう聞いて、俺は返す言葉を探した。
嬉しい、気持ちはあった。でも、それだけで受け取ってしまうのは少し違う気がした。
俺のドラマを見たいと思ってくれたことの裏側に、雫がもう一度立ち止まって、それでもテレビを買おうと思った時間があったことをしたからだ。
「でも、湊のドラマを見たいって思ったから、一回、買ってみようかなって」
その言葉は静かだった。だからこそ、そのときの雫がどんな気持ちでテレビを選んだのか、俺には少しだけ想像できる気がした。
「最初にテレビをつけたときは、やっぱり昔のこと思い出したよ。でも、湊が出てるドラマ見てたら、いつの間にかそっちに夢中になってて」
雫の声に、ほんの少しだけ当時を懐かしむような響きが混じる。
「それからかな。テレビをつけることが、前ほど怖くなくなったの」
その言葉を聞いて、俺は窓の外へ視線を向けた。
自分が仕事としてやっていることが、こんなふうに誰かの時間の中に残っていくなんて、役者になった頃には考えたこともなかった。演じて、撮影して、放送されて、それで終わりだと思っていたものが、雫にとってはもう少し違う意味を持っていたのだと思うと、不思議な気持ちになった。
「今でも、たまに思い出すことはあるけどね」
雫はそう続けた。
「でも、もうテレビを見ること自体を避けなくてもいいかなって、今は思えるようになった」
その言葉を聞いて、俺は雫の横顔を見た。何かを忘れたわけでも、過去がなくなったわけでもない。ただ、ずっと遠ざけていたものを、もう一度自分のそばに置いてもいいと思えるようになった。
あのときは、それだけの話だと思ってたのに、今は少し違って聞こえる。
「でもね……湊のドラマを見るために、テレビ買ったとき、正直に言えば、めちゃくちゃ勇気いったんだ」
テレビを買うことなんて、普通なら迷うほどのことじゃない。店にいって、気に入ったものを選んで、家に置けばそれで終わる。けど雫にとっては、十年避け続けてきたものを、もう一度自分の生活の中に置くということだったのだと思う。
「十年くらい見てなかったから、また置いても大丈夫かなって、買う前は思ったし」
そう聞いて、俺は返す言葉を探した。
嬉しい、気持ちはあった。でも、それだけで受け取ってしまうのは少し違う気がした。
俺のドラマを見たいと思ってくれたことの裏側に、雫がもう一度立ち止まって、それでもテレビを買おうと思った時間があったことをしたからだ。
「でも、湊のドラマを見たいって思ったから、一回、買ってみようかなって」
その言葉は静かだった。だからこそ、そのときの雫がどんな気持ちでテレビを選んだのか、俺には少しだけ想像できる気がした。
「最初にテレビをつけたときは、やっぱり昔のこと思い出したよ。でも、湊が出てるドラマ見てたら、いつの間にかそっちに夢中になってて」
雫の声に、ほんの少しだけ当時を懐かしむような響きが混じる。
「それからかな。テレビをつけることが、前ほど怖くなくなったの」
その言葉を聞いて、俺は窓の外へ視線を向けた。
自分が仕事としてやっていることが、こんなふうに誰かの時間の中に残っていくなんて、役者になった頃には考えたこともなかった。演じて、撮影して、放送されて、それで終わりだと思っていたものが、雫にとってはもう少し違う意味を持っていたのだと思うと、不思議な気持ちになった。
「今でも、たまに思い出すことはあるけどね」
雫はそう続けた。
「でも、もうテレビを見ること自体を避けなくてもいいかなって、今は思えるようになった」
その言葉を聞いて、俺は雫の横顔を見た。何かを忘れたわけでも、過去がなくなったわけでもない。ただ、ずっと遠ざけていたものを、もう一度自分のそばに置いてもいいと思えるようになった。


