向いに座る、いつもと変わらない様子で料理を口に運びながら、ときどき俺の話に小さく笑っている。その何気ない時間を過ごしていると、昨日までなら何年も会ってない親父のことを話すなんて考えてなかったのに、今日はどうしても、そのことを雫に伝えてみたくなった。
「あのさ、雫……俺、今度親父に会いに行こうと思う」
口にしてみると、思ったよりも普通の言葉だった。雫はフォークを止めて、少しだけ目を丸くする。
「お父さんに?」
「うん」
「……急だね」
「俺もそう思う」
自分でもそう思うから、苦笑いしながら答えた。
昨日ことを全部話すつもりはなかった。事故の記事を見つけたことも、それをきっかけに親父のことを考えてしまったことも、まだ自分の中で整理しきれていない。それでも、何年も避けてきた相手に会いに行こうと思えたのは、たぶん昨日、雫と話したことがきっかけだった。
雫はそれ以上理由を聞こうとはせず、しばらく俺の顔を見てから、静かに「そっか」とだけ言った。
その短い言葉が、なんとなくありがたかった。
「……それでさ」
少しだけ間を置いてから、俺は続けた。
「……俺と一緒に来て欲しいんだけど」
雫の手が、テーブルの上でわずかに止まった。
「…私が?」
「うん…だめかな」
自分でも、なぜ着いてきて欲しいと思ったのか、きちんと言葉にできるわけじゃなかった。
ただ、一人で帰ることを考えたときより、雫が隣にいるところを想像したときのほうが、親父の前に立つ自分を少しだけ自然に思い浮かべられていた。
「……いいの?」
「俺がお願いしてる側なんだけど……」
そう答えると、雫は少しだけ考えるように視線を落として、それから俺を見た。
「じゃあ…一緒に行く」
その言葉を聞いた時、不思議と力が抜けた。
親父に会うことへの不安がなくなったわけじゃない。それでも、隣に雫がいると思うだけで、これから向かう場所は少しだけ違って見えた。
俺は雫に笑いかけながら、まだ見えていない実家までの道を、頭の中でぼんやりと思い浮かべていた。
「あのさ、雫……俺、今度親父に会いに行こうと思う」
口にしてみると、思ったよりも普通の言葉だった。雫はフォークを止めて、少しだけ目を丸くする。
「お父さんに?」
「うん」
「……急だね」
「俺もそう思う」
自分でもそう思うから、苦笑いしながら答えた。
昨日ことを全部話すつもりはなかった。事故の記事を見つけたことも、それをきっかけに親父のことを考えてしまったことも、まだ自分の中で整理しきれていない。それでも、何年も避けてきた相手に会いに行こうと思えたのは、たぶん昨日、雫と話したことがきっかけだった。
雫はそれ以上理由を聞こうとはせず、しばらく俺の顔を見てから、静かに「そっか」とだけ言った。
その短い言葉が、なんとなくありがたかった。
「……それでさ」
少しだけ間を置いてから、俺は続けた。
「……俺と一緒に来て欲しいんだけど」
雫の手が、テーブルの上でわずかに止まった。
「…私が?」
「うん…だめかな」
自分でも、なぜ着いてきて欲しいと思ったのか、きちんと言葉にできるわけじゃなかった。
ただ、一人で帰ることを考えたときより、雫が隣にいるところを想像したときのほうが、親父の前に立つ自分を少しだけ自然に思い浮かべられていた。
「……いいの?」
「俺がお願いしてる側なんだけど……」
そう答えると、雫は少しだけ考えるように視線を落として、それから俺を見た。
「じゃあ…一緒に行く」
その言葉を聞いた時、不思議と力が抜けた。
親父に会うことへの不安がなくなったわけじゃない。それでも、隣に雫がいると思うだけで、これから向かう場所は少しだけ違って見えた。
俺は雫に笑いかけながら、まだ見えていない実家までの道を、頭の中でぼんやりと思い浮かべていた。


