仕事が落ち着いたら。もう少し売れたら。いつか時間ができたら。
そうやって「そのうちでいい」と思い続けている。スマートフォンをテーブルに置き、俺はそれ以上考えるのを殺めた。まだいい。親父も元気だと言っていた。だから、今すぐ何かをする必要なんてない。
そう思って、シャワーを浴びにお風呂場へ向かった。
母から電話があった数日後、俺は雫が前から行きたいと言っていた定食屋で雫と昼食を取っていた。
人目につきにくい店の奥の席で向かい合い、料理を食べながら最近の仕事の話をしたり、次はどこに行こうかなんて話しているうちに、話題はいつの間にか別のところに移っていた。
雫が頼んだ料理を一口食べて、「これ、美味しい」と笑ったのを見て、俺も同じものを頼めばよかったなんて思いながら思いながら箸を動かしていると、ふと、先日の母との電話が頭に浮かんだ。
「……そういえば」
「ん?」
「この前、母さんから電話があったんだよね」
そして、雫には自分の家族の話とか、したことないなと思った。
「お母さんから?」
「うん。久しぶりに声聞いたんだよね。元気にしてるかって。仕事は忙しいのかとか、ちゃんと飯食ってうのかとか、そのくらいだけど」
「そうなんだ」
「うん。昔と全然変わってなくてさ」
そう言うと、雫が少し笑った。
「湊のお母さんって、優しいんだね」
「まあ……そうだな」
言いながら、母の声を思い出す。
ちゃんと食べるのよ、と最後まで言っていた。離れて何年も経つのに、心配されることは昔と何も変わらない。
「俺の実家、旅館なんだ」
「旅館?」
「そう。親父がやってる」
雫が驚いたように目を開いた。やはり旅館をやっていることは珍しいことらしい。
「知らなかった」
「言ってなかったからな」
俺は水を一口飲んでから、続けた。
「昔から、親父は俺に旅館を継いでほしかったみたいでさ。でも、俺は俳優をやりたかったから」
そこまで話して、思わず苦笑いを浮かべてしまった。
「それで、ちょっと口喧嘩して家出たんだよね」
「……そうなんだ」
「うん」
「それで、俳優やってるんだね」
「そう」
そうやって「そのうちでいい」と思い続けている。スマートフォンをテーブルに置き、俺はそれ以上考えるのを殺めた。まだいい。親父も元気だと言っていた。だから、今すぐ何かをする必要なんてない。
そう思って、シャワーを浴びにお風呂場へ向かった。
母から電話があった数日後、俺は雫が前から行きたいと言っていた定食屋で雫と昼食を取っていた。
人目につきにくい店の奥の席で向かい合い、料理を食べながら最近の仕事の話をしたり、次はどこに行こうかなんて話しているうちに、話題はいつの間にか別のところに移っていた。
雫が頼んだ料理を一口食べて、「これ、美味しい」と笑ったのを見て、俺も同じものを頼めばよかったなんて思いながら思いながら箸を動かしていると、ふと、先日の母との電話が頭に浮かんだ。
「……そういえば」
「ん?」
「この前、母さんから電話があったんだよね」
そして、雫には自分の家族の話とか、したことないなと思った。
「お母さんから?」
「うん。久しぶりに声聞いたんだよね。元気にしてるかって。仕事は忙しいのかとか、ちゃんと飯食ってうのかとか、そのくらいだけど」
「そうなんだ」
「うん。昔と全然変わってなくてさ」
そう言うと、雫が少し笑った。
「湊のお母さんって、優しいんだね」
「まあ……そうだな」
言いながら、母の声を思い出す。
ちゃんと食べるのよ、と最後まで言っていた。離れて何年も経つのに、心配されることは昔と何も変わらない。
「俺の実家、旅館なんだ」
「旅館?」
「そう。親父がやってる」
雫が驚いたように目を開いた。やはり旅館をやっていることは珍しいことらしい。
「知らなかった」
「言ってなかったからな」
俺は水を一口飲んでから、続けた。
「昔から、親父は俺に旅館を継いでほしかったみたいでさ。でも、俺は俳優をやりたかったから」
そこまで話して、思わず苦笑いを浮かべてしまった。
「それで、ちょっと口喧嘩して家出たんだよね」
「……そうなんだ」
「うん」
「それで、俳優やってるんだね」
「そう」


