恋と焦燥のロードマップ

三度目に会った日は、雨が降っていた。待ち合わせ場所へ向かう途中で傘を忘れたことに気づいて、駅のコンビニで急いで一本買った。改札を出ると、湊は少し離れたところで傘を差しながら立っていた。黒い帽子に眼鏡という格好は最初に会った時と同じだったけれど、以前ほど身構えているように見えなかった。
「雨、結構降ってますね」
「雫さん、濡れてない?」
「大丈夫です。さっき傘買ったので」
「そっか」
そう言って、湊は私の傘を一度見て、それから自分の傘へと視線を戻した。
「じゃあ、行きましょうか」
「はい」
その日は映画を観たあと、近くの店で食事をした。映画の感想を話しながら歩いていると、湊は何度も「あのシーン、どう思いました?」と聞いてくる。私は自分でも意外なくらい長く話していた。普段なら、人に自分の感想をここまで細かく話すことはない。でも、湊は口を挟まず、時々笑いながら聞いてくれた。
店を出るころは雨はほとんど止んでいた。
「雫さんって、映画の話する時だけちょっと早口になりますね」
「え?」
「さっき気づきました」
「……恥ずかしいです」
「いや、いいと思います」
湊はそう言って笑った。
「好きなものの話をしている時って、そういう感じになるんじゃないですか」
その言葉を聞いて、私は少しだけ黙った。
好きなもの。
そんなふうに言われると、なんだか自分のことまで肯定してもらったような気がした。
その日から、メッセージの内容にも少しずつ変化が出てきた。
これまでは「今日は仕事だった」「お疲れ様」といった短いやり取りが中心だったのに、最近は写真が送られてくることも増えた。湊が仕事帰りに見つけた店の外観だったり、帰り道の空だったり、コンビニで見つけた新商品だったりする。
『湊:これ、雫さん好きそう』
写真には、前にスイーツが好きと話していたからか、美味しそうなプリンが写っていた。
『雫:美味しそう。今度一緒に食べようかな』
『湊:それ、誘ってる?』
『雫:……そうかも』
送信したあと、私は自分の顔が熱くなるのを感じた。少し前までなら、こんなことは言わなかったと思う。でも、湊なら大丈夫。いつからか、そんなふうに思えるようになっていた。
ある日の夜、仕事から帰ってスマートフォンを見ていると、湊からメッセージが届いた。