見間違えるはずがなかった。十数年の月日が経ち、すっかり大人の女性の雰囲気を纏ってはいるけれど、それは間違いなく、俺の記憶の底にいる美月だった。
スマートフォンを握る掌が、じんわりと汗ばんでいくのがわかった。
まさか、美月もこのアプリをやっているなんて。しかも、同じ街の近くに住んでいるのか。
プロフィールの文章を貪るように読む。
『年齢的にもそろそろ落ち着きたいと思い、始めてみました。仕事は都内でデザイン関係の仕事をしています。昔の思い出をなかなか吹っ切れない不器用な性格ですが、一歩進めたらいいと思っています。』
その言葉の端々に、俺と同じような、過去に囚われた焦りと迷いが滲んでいるように見えた。
画面の下部には、ピンク色の「いいね」のボタンが光っている。
これを押せば、俺の存在が美月に通知される。向こうが俺だと気づくかどうかはわからない。気づかれた時、どんな顔をされるかもわからない。「何やってるの」と呆れられるだろうか。それとも、無視されるだろうか。
ぐるぐると渦巻く思考の中で、俺の親指は、自分の意思とは無関係には動いていた。
トントン、と画面をタップする。
俺の「いいね」が美月のアカウントへ送られた。
スマートフォンの画面を伏せ、ベッドに顔をうずめる。心臓の鼓動がうるさくて、耳の奥でドクンと鳴り響いていた。送らなければよかったという後悔と、どうか気づいてくれという身勝手な願いが、頭の中で激しくぶつかり合っていた。
それから、わずか三分後のことだった。
枕元で、スマートフォンが本日一番の大きな振動をあげた。
飛び起きるようにして画面を見る。アプリの通知欄に、鮮やかな文字が踊っていた。
『みづきさんとマッチングが成立しました!メッセージを送りましょう』
液晶画面に浮かび上がった『マッチング成立しました』の文字を、俺は硬直したまま見つめた。
画面の向こうにいるのは、間違いなく美月だ。しかし、システムが機械的に弾き出した「おめでとうございます」というポップアップの軽薄さが、かえって現実感を希薄させる。
メッセージの入力欄をタップし、キーボードを表示させたものの、親指が微動だにしない。
「……なんて送るのが正解なんだ」
スマートフォンを握る掌が、じんわりと汗ばんでいくのがわかった。
まさか、美月もこのアプリをやっているなんて。しかも、同じ街の近くに住んでいるのか。
プロフィールの文章を貪るように読む。
『年齢的にもそろそろ落ち着きたいと思い、始めてみました。仕事は都内でデザイン関係の仕事をしています。昔の思い出をなかなか吹っ切れない不器用な性格ですが、一歩進めたらいいと思っています。』
その言葉の端々に、俺と同じような、過去に囚われた焦りと迷いが滲んでいるように見えた。
画面の下部には、ピンク色の「いいね」のボタンが光っている。
これを押せば、俺の存在が美月に通知される。向こうが俺だと気づくかどうかはわからない。気づかれた時、どんな顔をされるかもわからない。「何やってるの」と呆れられるだろうか。それとも、無視されるだろうか。
ぐるぐると渦巻く思考の中で、俺の親指は、自分の意思とは無関係には動いていた。
トントン、と画面をタップする。
俺の「いいね」が美月のアカウントへ送られた。
スマートフォンの画面を伏せ、ベッドに顔をうずめる。心臓の鼓動がうるさくて、耳の奥でドクンと鳴り響いていた。送らなければよかったという後悔と、どうか気づいてくれという身勝手な願いが、頭の中で激しくぶつかり合っていた。
それから、わずか三分後のことだった。
枕元で、スマートフォンが本日一番の大きな振動をあげた。
飛び起きるようにして画面を見る。アプリの通知欄に、鮮やかな文字が踊っていた。
『みづきさんとマッチングが成立しました!メッセージを送りましょう』
液晶画面に浮かび上がった『マッチング成立しました』の文字を、俺は硬直したまま見つめた。
画面の向こうにいるのは、間違いなく美月だ。しかし、システムが機械的に弾き出した「おめでとうございます」というポップアップの軽薄さが、かえって現実感を希薄させる。
メッセージの入力欄をタップし、キーボードを表示させたものの、親指が微動だにしない。
「……なんて送るのが正解なんだ」


