恋と焦燥のロードマップ

十一時半、江の島に到着した頃には、私のライフゲージはすでに半分以下になっていた。
さらに追い打ちをかけたのは、江の島の地形そのものだった。
「せっかく空いてるから、奥の岩屋の方まで歩いてみようか。あそこに美味しい生しらす丼の店があるんだ」
「わあ、いいですね! 行ってみたいです!」
笑顔で答えた私の足元は、五センチヒール。江の島を訪れたことがある人なら誰もが知っているはずだ。あの島は、平坦な観光地などではない。頂上の神社へ向かう参道は、延々と続く、容赦のない急勾配の階段の連続なのだ。
一歩、階段を上るたびに、足の裏の皮がめくれていくのが分かった。
じわじわと靴の中に熱い痛みが広がっていく。タイトなワンピースのせいで大股でも歩けず、私は大輔の後ろを、ペンギンのような歩幅で必死についていくしかなかった。
「真由さん、大丈夫? ちょっとペース早いかな」
「ううん、全然大丈夫! 景色が綺麗だから、楽しくて疲れなんて忘れちゃいます!」
嘘だ。一歩歩くたびに、脳内で「痛い痛い痛い死ぬ」というアラートが爆音で鳴り響いている。
お昼に入ったオーシャンビューのオシャレな和モダンカフェでも、地獄は続いた。運ばれてきた生しらすと地魚の御膳は、信じられないほど美味しそうだった。階段を上りまくった私のお腹は、今すぐにでもそれを犬食いのごとく胃袋に掻き込みたいと絶叫していた。
けれど、私の手が動かす箸は、Linkの攻略本の通りに「上品に、少しずつ」しか動かない。
大輔がおやすみなさいくらいの食べっぷりで箸を進める中、私は一口で数粒のしらすをそっと掬い上げ、咀嚼回数を限界まで増やしながら、ゆっくりと口に運ぶ。
お腹が空きすぎて胃が引き攣っているのに、「少食で可憐な真由」を維持するためだけに、目の前の大好物を前にして、私はただひたすらに自分の本能と戦い続けていた。半分も減らないお茶碗を見つめながら、美味しいはずのしらすが、まるで砂のように味気なく感じられてしまう。そんな自分が、ひどく惨めだった。
午後四時を回り、参道を往復してようやく駐車場に戻ってきたとき、私の足首はパンパンに腫れ上がり、感覚が麻痺していた。ワンピースの背中には、気疲れと疲労の冷や汗がべっとりと張り付いている。
車の助手席に滑り込み、ドアを閉めた瞬間、私は生きる気力を失ったかのようにシートに深く沈み込んだ。