嘘はついていない。行ってみたいと思っているのは本当だ。ただ、直近で行った「国内の温泉地」が、地元のスーパー銭湯であることだけは全力で伏せている。
文字のキャッチボールが進むたびに、私は自分の輪軌がどんどん「綺麗で、上品で、教養のあるお嬢さん」に書き換えられていくのを感じていた。
大輔の趣味であるゴルフの話には『父が少し嗜むので、私も興味はあるんです』と返し(実際は父が打ちっぱなしでぎっくり腰になっただけ)、彼の語るワインの銘柄には『私、あまりお酒は強くないんですけど、白ワインのすっきりしたものは好きです』と微笑みの絵文字を添えた。本当は生ビールのあとに芋焼酎のロックをガバガバ飲む、ただの酒飲みなのに。
メッセージを重ねて一週間。大輔のスマートな文体や、私の拙い話を丁寧に拾ってくれる優しさに、私の心は少しずつ、けれど確実に惹かれ始めていた。
画面の向こうの彼は、きっと本当に素敵な人なのだ。だからこそ、自分のついている嘘の数々が、じわじわと真綿で首を絞めるように苦しくなってくる。
そんな時、ついにその瞬間が訪れた。
『真由さんとお話ししていると、すごく癒やされます。もしよかったら、今週末にでも少しお会いしませんか?恵比寿に、僕がよく行く美味しいビストロがあるんです。真由さんの好きそうな、お野菜が美味しいお店ですよ』
画面の文字を見た瞬間、嬉しさと同時に、冷たい汗が背中を伝った。
ついに、オーディションの一次審査(書類)が通り、実技面接(対面)が決まってしまった。
『嬉しいです!恵比寿、久しぶりなので楽しみです。週末、お会いできるのを開しみにしていますね』
そう返信したあと、私はスマホを放り出し、クローゼットへと駆け込んだ。
「着ていく服がない……っ!」
私のクローゼットの中身は、着古したパーカー、楽ちんなワイドパンツ、あるいは仕事用の地味なオフィスカジュアル。あのプロフィール写真の「代官山の微笑み」に合わせるような、男受けする清楚な服なんて一枚も持っていなかった。
週末までのカウントダウンが始まる。私は頭を抱えながら、焦燥感でいっぱいのロードマップを心の中で描き始めていた。
文字のキャッチボールが進むたびに、私は自分の輪軌がどんどん「綺麗で、上品で、教養のあるお嬢さん」に書き換えられていくのを感じていた。
大輔の趣味であるゴルフの話には『父が少し嗜むので、私も興味はあるんです』と返し(実際は父が打ちっぱなしでぎっくり腰になっただけ)、彼の語るワインの銘柄には『私、あまりお酒は強くないんですけど、白ワインのすっきりしたものは好きです』と微笑みの絵文字を添えた。本当は生ビールのあとに芋焼酎のロックをガバガバ飲む、ただの酒飲みなのに。
メッセージを重ねて一週間。大輔のスマートな文体や、私の拙い話を丁寧に拾ってくれる優しさに、私の心は少しずつ、けれど確実に惹かれ始めていた。
画面の向こうの彼は、きっと本当に素敵な人なのだ。だからこそ、自分のついている嘘の数々が、じわじわと真綿で首を絞めるように苦しくなってくる。
そんな時、ついにその瞬間が訪れた。
『真由さんとお話ししていると、すごく癒やされます。もしよかったら、今週末にでも少しお会いしませんか?恵比寿に、僕がよく行く美味しいビストロがあるんです。真由さんの好きそうな、お野菜が美味しいお店ですよ』
画面の文字を見た瞬間、嬉しさと同時に、冷たい汗が背中を伝った。
ついに、オーディションの一次審査(書類)が通り、実技面接(対面)が決まってしまった。
『嬉しいです!恵比寿、久しぶりなので楽しみです。週末、お会いできるのを開しみにしていますね』
そう返信したあと、私はスマホを放り出し、クローゼットへと駆け込んだ。
「着ていく服がない……っ!」
私のクローゼットの中身は、着古したパーカー、楽ちんなワイドパンツ、あるいは仕事用の地味なオフィスカジュアル。あのプロフィール写真の「代官山の微笑み」に合わせるような、男受けする清楚な服なんて一枚も持っていなかった。
週末までのカウントダウンが始まる。私は頭を抱えながら、焦燥感でいっぱいのロードマップを心の中で描き始めていた。


