恋と焦燥のロードマップ

さらに、メイン写真も変えた。
友達にお願いして、代官山のおしゃれなカフェで「テラス席でメニューを選んでる風の自然な笑顔」の写真を撮ってもらった。服装は男ウケの王道であるパステルカラーのサマーニット。メイクも普段の跳ね上げラインをやめ、タレ目に見えるような優しいブラウンで統一した。
こうして誕生したのが、Link内の虚像――『真由・二十八歳・医療事務。休日は手料理や、観劇を楽しみ、男性を一歩引いて立てるような、清楚で控えめな女性』だった。
効果は劇的だった。
プロフィールを刷新した途端、スマートフォンの通知が止まらなくなった。
届く「いいね」の数は以前の十倍以上。その中には、一流企業の会社員や、公務員など、明らかに「まともな層」が含まれていた。
「やっぱりね」
私はベッドの上でニヤリと笑った。勝負の世界で勝つには、ルールの最適化が必要なのだ。嘘をついている罪悪感は、増えていく「いいね」の数字を前に霧散していった。
そんなある日、画面に一人の男性が表示された。
『大輔(二十八歳)/IT企業・インフラエンジニア』
プロフィールの写真を見て、思わず手が止まった。
一枚目の写真は、高層マンションのバルコニーらしき場所で、夜景をバックに白ワインのグラスを持っている姿。少し長めの前髪に、仕立ての良さそうなジャケットを着こなしている。爽やかで、どこか育ちの良さを感じる端正な顔立ちだった。
他の写真を見ると、海外のビーチリゾートらしき場所での一枚や、隠れ家風のバーでウイスキーのグラスを傾けているものがある。
自己紹介文にはこうあった。
『都内のIT企業でエンジニアをしています。仕事柄、休日はカレンダー通りです。趣味は海外旅行、都内の美味しい隠れ家バー巡り、最近はゴルフも始めました。タワマンでのんびり過ごす休日も好きです。お互いの価値観を大切にできる、品のある女性と出会えたら嬉しいです』
「うわ……完璧なハイスペ男じゃん」
港区のタワマンに住み、趣味はバー巡りとゴルフ。まさに私がターゲットにしたい、それでいて自分とは住む世界の違う「アッパー層」の男だった。医療事務の安月給で、江東区の築古アパートに住む私とは大違いだ。
でも、今の私には『丁寧な暮らしをする清楚系女子』の鎧がある。