彼女の細い指先が、感情に合わせてレバーを激しく動かしている。その横顔を見つめていると、高校時代、放課後の部室で彼女に恋焦がれていたあの瑞々しい感情が、一気に胸の奥から溢れ出してくるようだった。アプリで他の女性と会っていたときの、あの値踏みし合うような冷めた感覚とは訳が違う。俺の心は、間違いなく美月を求めて加速していた。
「あー、負けたー!」
美月はレバーから手を離し、椅子の背もたれ(と言ってもただの丸椅子だが)にだらんと体を預けた。
「でも、楽しかった。拓也、やっぱり全然手加減してくれないんだもん」
「勝負に手加減はなしだろ。……さて、そろそろ喉乾かないか?」
「うん、冷たいもの飲みたい!」
ゲームセンターを出ると、夜風が火ードンと火照った顔に心地よかった。
俺たちはコンビニで缶の飲み物を買い、近くの小さな公園のベンチに座った。
街灯の鈍い光が、静まり返った公園を照らしている。
缶コーヒーのプルタブを開ける美月の横顔を見つめながら、俺はポケットの中の鍵――あの『T』のイニシャルが刻まれた古びたキーホルダーの感触を、そっと確かめていた。美月もまた、同じ思い出を大切に抱えて、今こうして俺の隣にいる。
遠回りをしたけれど、俺たちはようやく、あの駅のホームで途切れたはずの物語の続きを、ここから始められるのかもしれない。
夜風に揺れる美月の髪を見つめながら、俺は心地よい胸の高鳴りを、ただ静かに噛み締めていた。
缶コーヒーのプルダブを引くと、カシャ、と静まり返った公園に小気味のいい音が響いた。
手渡された冷たいカフェオレを、美月は愛おしそうに両手で包み込む。
「ありがと。……いやぁ、まさかあのゲームがまだ現役で残ってるなんて思わなかったな」
美月はベンチに深く腰掛け、夜空を見上げながら悪戯っぽく笑った。少し上気した頬が、街頭のオレンジ色に照らされている。
「美月、全然腕落ちてなかったじゃん。中盤のコンボとか、普通に焦ったけど」
「ふふん、伊達に高校時代、映画の帰りに拓也と特訓してないからね。次やったら絶対私勝つし」
二人の間に心地のいい笑い声が弾ける。
十数年の空白なんて、まるで最初からなかったかのようだった。ミニシアターで観たかつてのお気に入り映画の感想、ゲームセンターでの他愛のない勝負。すべてがパズルピースのようにカチリと噛み合っていく。
「あー、負けたー!」
美月はレバーから手を離し、椅子の背もたれ(と言ってもただの丸椅子だが)にだらんと体を預けた。
「でも、楽しかった。拓也、やっぱり全然手加減してくれないんだもん」
「勝負に手加減はなしだろ。……さて、そろそろ喉乾かないか?」
「うん、冷たいもの飲みたい!」
ゲームセンターを出ると、夜風が火ードンと火照った顔に心地よかった。
俺たちはコンビニで缶の飲み物を買い、近くの小さな公園のベンチに座った。
街灯の鈍い光が、静まり返った公園を照らしている。
缶コーヒーのプルタブを開ける美月の横顔を見つめながら、俺はポケットの中の鍵――あの『T』のイニシャルが刻まれた古びたキーホルダーの感触を、そっと確かめていた。美月もまた、同じ思い出を大切に抱えて、今こうして俺の隣にいる。
遠回りをしたけれど、俺たちはようやく、あの駅のホームで途切れたはずの物語の続きを、ここから始められるのかもしれない。
夜風に揺れる美月の髪を見つめながら、俺は心地よい胸の高鳴りを、ただ静かに噛み締めていた。
缶コーヒーのプルダブを引くと、カシャ、と静まり返った公園に小気味のいい音が響いた。
手渡された冷たいカフェオレを、美月は愛おしそうに両手で包み込む。
「ありがと。……いやぁ、まさかあのゲームがまだ現役で残ってるなんて思わなかったな」
美月はベンチに深く腰掛け、夜空を見上げながら悪戯っぽく笑った。少し上気した頬が、街頭のオレンジ色に照らされている。
「美月、全然腕落ちてなかったじゃん。中盤のコンボとか、普通に焦ったけど」
「ふふん、伊達に高校時代、映画の帰りに拓也と特訓してないからね。次やったら絶対私勝つし」
二人の間に心地のいい笑い声が弾ける。
十数年の空白なんて、まるで最初からなかったかのようだった。ミニシアターで観たかつてのお気に入り映画の感想、ゲームセンターでの他愛のない勝負。すべてがパズルピースのようにカチリと噛み合っていく。


