恋と焦燥のロードマップ

拓也も、美月も、杏奈も、神谷誠也も、それぞれの毎日を歩いていた。
あの頃とは違う場所にいる人もいれば、変わらないものを大切にしている人もいる。
迷いながら進んでいる人もいれば、ようやく自分の進みたい道を見つけた人もいる。
それぞれの人生は、Linkを離れたあとも続いていた。
そして、もう二人。
湊と雫にも、その後の時間があった。
二人が出会ってから、いくつもの季節が過ぎた。
俳優としての湊の仕事は、その後も続いていた。
出演する作品が増え、名前を知られるようになっても、彼が一人の人間として大切にしていたものは、少しずつ変わっていった。
かつては、俳優になることと実家の旅館を継ぐことは、どちらか一つしか選べないと思っていた。
けれど、人生はそんなに単純ではなかった。
先に夢を追いかけてもいい。
遠回りしてもいい。
一度離れた場所へ、あとから戻ってもいい。
湊は、俳優として歩いてきた時間を捨てることなく、その先で、もう一つの道を選んだ。
その隣には、雫がいた。
二人は恋人になり、やがて夫婦になった。
そしてある日、湊は長年続けてきた俳優業を終えることを決めた。
それは、夢を諦めたということではなかった。
俳優として生きた時間を抱えたまま、次の道へ進むということだった。
その先には、かつて自分が離れた実家の旅館があった。
今では、その場所で雫と一緒に暮らしている。
朝になれば仕事が始まり、昼になれば宿泊客を迎え、夕方になれば一日の終わりを迎える。
特別なことのない日も多い。
それでも、二人にとっては、それが選んできた未来だった。
そんなある日の夕方。
大輔と真由のいる部屋で、テレビからニュースキャスターの声が聞こえていた。
『続いて、芸能のニュースです。俳優の南條湊斗さんが、かねてより交際していた一般女性との結婚を発表しました。また、南條さんは今回の結婚を機に、長年続けてきた俳優業を引退することも明らかにしました』
「えー…南條湊斗、結婚したんだ」
真由がテレビを見ながら呟く。
「え、真由って南條湊斗のファンだったの?」
「うん。昔、結構好きだった。あ、昔ね!?」
「いや、別にそこに嫉妬しないよ!?というかファンだったなら喜びなよ」
「……それはそうだけどさ」
真由が少しだけ不満そうに口を尖らせる。