学校の完璧4人アイドルには、秘密の顔がある。

「……絶対言わないでね?」

昨日。

放課後の空き教室で、4人からそうお願いされた。

私は頷いた。

「うん。誰にも言わないよ」

「……本当に?」

一ノ瀬くんが心配そうに私を見る。

「本当だって」

「ならよかった……」

ほっとしたように笑う一ノ瀬くん。

その隣で黒崎くんが口を開いた。

「一応、確認しておきたい」

「なに?」

「俺たちのことを知ったからって、学校で態度変えないで」

「え?」

「今まで通りでいてほしい」

「……うん」

瀬戸くんも頷く。

「俺も、それがいい」

「学校では普通にしててほしい」

九条くんも、

「僕も」

と頷いた。

「……わかった」

私は笑った。

「じゃあ、今まで通りね」

「うん」

「……」

「……」

「……」

「……」

「?」

なぜか4人とも黙っている。

「どうしたの?」

すると。

「……いや」

黒崎くんが目を逸らした。

「今まで通りって言われても」

「?」

「昨日まで、ほとんど話してなかったから」

「あ」

確かに。

「じゃあ……」

瀬戸くんが考える。

「今日から普通に話す?」

「うん」

「昼も一緒に食べる?」

「え?」

「それは普通じゃないだろ」

黒崎くんが即座にツッコむ。

「え、でも昨日も一緒に食べたじゃん」

「昨日はたまたま」

「じゃあ今日もたまたまってことで!」

「意味わかんない」

「……ふふ」

思わず笑ってしまった。

すると。

「……美桜ちゃん」

一ノ瀬くんが私を見る。

「何?」

「笑った」

「うん?」

「昨日も思ったけど……」

一ノ瀬くんが少し嬉しそうに笑う。

「美桜ちゃんって、よく笑うね」

「そうかな?」

「うん」

「……なんか恥ずかしい」

「可愛い」

「……え?」

一瞬。

時間が止まった気がした。

「……」

一ノ瀬くんも固まる。

「……あ」

「……」

「今のは……」

「今のは?」

「……忘れて」

「無理」

黒崎くんが即答した。

「蓮、今のは普通にアウト」

「黒崎くん!?」

「学校では絶対言わないくせに」

「それは……」

「へえ〜」

瀬戸くんがニヤニヤする。

「蓮、美桜ちゃんには言えるんだ?」

「……陽向」

「なに?」

「黙って」

「はい」

そのやり取りを見て。

私はまた笑った。

――やっぱり。

この4人は面白い。

学校にいるときとは、全然違う。

***

昼休み。

「美桜ちゃん!」

「わっ」

教室に入った瞬間、瀬戸くんが手を振ってきた。

「一緒に食べよ!」

「うん」

私は自分の席に座る。

すると。

当然のように4人が集まってきた。

「……」

周りの視線が痛い。

「ねえ」

私は小声で言う。

「みんな、見てるよ……」

「え?」

瀬戸くんが周りを見る。

「……あ」

女子たちがこちらを見ている。

「どうしよう」

「普通にしてればいいんじゃない?」

黒崎くんが言う。

「いや、普通じゃないから!」

「確かに」

九条くんが頷く。

「僕たち、いつも四人で食べてるわけじゃないし」

「それを本人が言う!?」

思わずツッコむ。

その瞬間。

「ふふっ」

「……?」

一ノ瀬くんが笑った。

「美桜ちゃん、昨日からずっとツッコんでるね」

「だって!」

「なんか新鮮」

「新鮮?」

「うん」

一ノ瀬くんは嬉しそうだった。

そのとき。

「……白石さん」

後ろから声をかけられた。

振り向くと、クラスの女子が立っている。

「ちょっといい?」

「うん」

女子は私の隣まで来ると、小さな声で聞いた。

「……一ノ瀬くんたちと、仲良いの?」

「え?」

「最近、ずっと一緒にいるよね?」

「えっと……」

どう答えればいいんだろう。

秘密のことは言えない。

「席が近いから……」

「それだけ?」

「うん」

「ふーん……」

女子は4人を見る。

「……いいなぁ」

「え?」

「私も話してみたい」

そう言って去っていった。

私はほっと息を吐く。

「……危なかった」

すると。

「美桜ちゃん」

一ノ瀬くんが小さな声で呼ぶ。

「なに?」

「ありがとう」

「?」

「秘密、守ってくれて」

「……そんなの当然だよ」

「でも」

一ノ瀬くんは少しだけ目を伏せた。

「僕たち、こういう自分を誰かに知られるの……ちょっと怖かったから」

「……」

「だから、美桜ちゃんが普通に接してくれるの、嬉しい」

その言葉に。

私は少しだけ胸が温かくなった。

「じゃあ」

私は笑う。

「これからも普通にするね」

「……うん」

一ノ瀬くんも笑った。

その瞬間。

「俺も」

黒崎くんが口を開く。

「え?」

「普通にしててほしい」

「……うん」

「俺も」

瀬戸くん。

「僕も」

九条くん。

「……ふふ」

私は笑った。

「じゃあ、これからもよろしくね」

「よろしく」

「よろしく」

「よろしく」

「よろしく」

4人の声が重なる。

――こうして。

私と4人だけの秘密が始まった。

でも。

この秘密をきっかけに。

私たちは少しずつ。

昨日までとは違う関係になっていくことになる。

そのことを。

私はまだ知らなかった。