リフォーム営業マンの小さなドキドキ短編集 エピソード4

初対面でこんな事言われたら、、②

葉山さんは、見るものすべてに目を輝かせて質問してきた。

「このカウンター、どうやって切ったんですか?」

「この扉の金具って、どうやって付けたんですか?」

「こういうのを作るには、どんな道具を使えばいいんですか?」

頭の中は、そんなことでいっぱいだった。

大山さんは、その一つひとつに丁寧に答えている。

葉山さんの好奇心が一旦落ち着いたところで、俺は声を掛けた。

「お茶にしましょう」

玄関ポーチに簡易椅子を一つ置き、先にポーチの段差へ腰を下ろして二人を待った。

「大山さーん!」

「お茶ですよーー!」

いつもなら、一服したくて真っ先に俺へ声を掛けてくる大山さん。

なのに今日は、全然来ない。

……なんだよ。

楽しそうにしている二人を見て、内心ちょっと嫉妬していた。

「まだ来ない……」

「もう、一服しましょっと」

そう声を掛けながら作業場へ戻ると――

「あ……」

思わず声が出た。

「あ……大山さん……ごめん。先、一服してるわ」

「ごめんって……何だよ笑」

自分でも何に対して謝っているのか分からない。

俺はその場をすぐに離れた。

大山さんが葉山さんを後ろから抱えるように支え、葉山さんが右手に持ったノコギリの使い方を教えていた。

別に、変なことじゃない。

ただ、切り方を教えているだけだ。

分かっている。

分かっているんだけど――

後ろからその光景を見た瞬間、

「見ちゃいけないものを見てしまった」

そんな妙な申し訳なさが、言葉になる前の「あ……」になって出てしまったのだ。

二人も、とっさに気まずさを感じたのか手を離した。

「あ……すみません」

大山さんが少し慌てたように言う。

「いま、ちょうど切り方を教えてて……」

そう言いながら、二人がこちらへ歩いてくる。

少し気まずい空気から始まった一服だった。

……はずなのに。

その空気は、あっという間に楽しいものへ変わっていった。

葉山さんの気遣いと会話力。

場の空気を変えるって、こういうことなんだな。

そんなことを、妙に実感していた。

俺は48歳。

大山さん54歳。

葉山さん51歳。

50代あるあるを、二人が楽しそうに共有している。

「もう少しで仲間に入れるね」

なんて、俺をネタにして二人で笑っている。

家が二軒先だということ。

シングルマザーで、社会人の娘さんがいること。

そして――

「好きなタイプは昔から森田剛です笑」

なんて話まで。

気がつけば、かなり盛り上がっていた。

「もー、大山さん」

俺は笑いながら立ち上がった。

「終わらなくなるから、やるよ」

楽しかった。

楽しかったけど……

このまま楽しさに負けそうだったので、仕事に戻ることにした。

葉山さんも、

「私もいい加減、お邪魔ですよね」

と笑いながら、帰り支度を始めた。

俺は、棚を取り付けるには下地が必要なことや、使う塗料のことを説明した。

そして、

「自宅に帰ったら、写真と採寸をお願いします」

と伝えた。

大山さんの計らいで、余っていた材料を提供してあげることになったからだ。

「えー! ありがとうございます!」

葉山さんが嬉しそうに笑う。

そして、少し不安そうな顔で、

「また、お邪魔してもいいですか?」

と聞いてきた。

すると――

「是非是非!」

俺より先に、大山さんが答えた。

…………。

俺の現場なのに。