初対面でこんな事言われたら、、
これは、嘘みたいな話だけど、本当の話。
もちろん、多少の脚色はある。笑
ただ、最初に言っておきたい。
あくまでも――
リフォーム相談で伺った話だ。
そんな出会いだった。
⸻
現場の工事中、材料が足りなくなった。
仕方なく、近くのホームセンターへ向かった。
探していたのは、ホワイトの艶消し塗料。
デニムジャケットにGパン。
買い物かごには、養生テープにローラー、刷毛。
どう見ても店員ではない。
塗料コーナーで棚を眺めながら、目的の塗料を探していると、
「あのー……」
背中越しに、か細い声が聞こえた。
俺は振り返らなかった。
自分に声を掛けているとは思わなかったからだ。
もしかしたら、通路を塞いでいるのかもしれない。
そう思って、棚の方へ少しだけ身体を寄せた。
「あの……お兄さん……すみません」
……ん?
まだ聞こえる。
「教えて欲しいんですが……」
そこでようやく振り返った。
「えっ?」
俺か?
「あ、はい。どうしました?」
そこに立っていたのは、同年代か、少し上くらいの女性だった。
ロールアップした太めのデニム。
薄緑のタンクトップに、白いボタンダウンシャツ。
金髪に近いショートカット。
第一印象は――
お洒落な人だな。
だった。
女性は少し申し訳なさそうな顔をしながら、塗料の棚を指差した。
「あの……お店の人に聞いたら、塗料はここだって言われたんですけど……」
「はい」
「木を、木目を出したまま塗れるやつってどれですか?って聞いたら、オイルステインって言われて……」
「ああ、はい」
「でも、店員さんも忙しそうですぐ行っちゃって……。もう少し詳しく聞きたかったんですけど……」
そこで一度、俺の方を見る。
「ご迷惑かなと思ったんですけど……」
そして、俺の買い物かごを見る。
「実際に作業されてそうな方がいたので……声を掛けちゃいました」
そう言って、女性はペコッと頭を下げた。
正直、時間はなかった。
現場では大工さんが待っている。
でも――
自分でやってみようとしている。
しかも、知らない人に声を掛けるのだって、きっと勇気がいったはずだ。
そんな気持ちを邪険にはできなかった。
「えっと……何を作るんですか?」
そう聞くと、女性は少し嬉しそうに話し始めた。
どうやら、自宅のトイレに棚を作りたいらしい。
「なるほど。それなら、オイルステインで大丈夫だと思いますよ。ただ、木の種類によって色の出方が結構変わります」
「そうなんですか?」
「はい。あと、塗る前に……」
そこから、しばらく塗料の話をした。
話しているうちに、ふと思い出した。
今、俺が向かっている現場でも――
トイレのカウンターを、大工さんに造作してもらっていた。
「そういえば……」
俺は女性にその話をした。
「今ちょうど、近くの現場で大工さんにトイレの造作をしてもらってるんですよ」
「えっ!」
女性の顔がパッと明るくなった。
「見てみたいです!」
……そこまで?
正直、少し驚いた。
「いや、空き家の売り物件なんですけど……」
「それでも大丈夫です!」
目が完全に本気だった。
DIYが好きで、自分でも色々作っているらしい。
そして何より――
プロが実際に作っているところを見てみたい。
その気持ちが伝わってきた。
「じゃあ……大工さんに聞いてみます」
その場で大工の大山さんに電話をした。
事情を説明すると、
「いいですよ。連れてきちゃってください」
いつもの大山さんらしく、あっさり了承してくれた。
「大丈夫だそうです」
そう伝えると、
「本当ですか!」
また目が輝いた。
女性も車で来ていたので、
「じゃあ、現場まで案内します。車でついてきてください」
そう伝えた。
ただ、途中ではぐれてしまうと困る。
「念のため、LINE交換しておきましょうか」
「あ、はい!」
そこで初めて、名前を知った。
葉山さん。
『葉山です』
お辞儀をするスタンプと一緒に、メッセージが届いた。
俺も簡単に挨拶を返した。
そして、現場へ向かった。
⸻
現場に到着すると、大山さんに葉山さんを紹介した。
「大山さん、こちら葉山さんです。DIYが好きで、今日ホームセンターで知り合って……」
「葉山です。突然申し訳ございません」
葉山さんは、また深々と頭を下げた。
大山さんは笑いながら、
「いやいや、全然いいですよ」
すると葉山さんは、現場を見渡しながら言った。
「DIYが大好きで……」
そして、トイレの造作を見つける。
「まさかプロの方に直接教えてもらえるなんて……」
本当に嬉しそうだった。
「ありがとうございます!」
その目はキラキラしていた。
完全に――
学ぶ気マンマンだ。
その姿を見ながら、俺は思った。
ホームセンターの塗料コーナーで、たまたま声を掛けられた。
ただ、それだけの出来事だった。
でも、あの時もし俺が、
「分かりません」
と言っていたら。
もし、急いでいるからと、そのまま立ち去っていたら。
きっと、この出会いはなかった。
人との出会いって、本当に不思議だ。
そして、この時の俺はまだ知らなかった。
このホームセンターでの出会いが――
この後、もう一つの「ドキドキ」に繋がっていくことを。
……もちろん、
あくまでもリフォーム相談で伺った話だけど。笑
これは、嘘みたいな話だけど、本当の話。
もちろん、多少の脚色はある。笑
ただ、最初に言っておきたい。
あくまでも――
リフォーム相談で伺った話だ。
そんな出会いだった。
⸻
現場の工事中、材料が足りなくなった。
仕方なく、近くのホームセンターへ向かった。
探していたのは、ホワイトの艶消し塗料。
デニムジャケットにGパン。
買い物かごには、養生テープにローラー、刷毛。
どう見ても店員ではない。
塗料コーナーで棚を眺めながら、目的の塗料を探していると、
「あのー……」
背中越しに、か細い声が聞こえた。
俺は振り返らなかった。
自分に声を掛けているとは思わなかったからだ。
もしかしたら、通路を塞いでいるのかもしれない。
そう思って、棚の方へ少しだけ身体を寄せた。
「あの……お兄さん……すみません」
……ん?
まだ聞こえる。
「教えて欲しいんですが……」
そこでようやく振り返った。
「えっ?」
俺か?
「あ、はい。どうしました?」
そこに立っていたのは、同年代か、少し上くらいの女性だった。
ロールアップした太めのデニム。
薄緑のタンクトップに、白いボタンダウンシャツ。
金髪に近いショートカット。
第一印象は――
お洒落な人だな。
だった。
女性は少し申し訳なさそうな顔をしながら、塗料の棚を指差した。
「あの……お店の人に聞いたら、塗料はここだって言われたんですけど……」
「はい」
「木を、木目を出したまま塗れるやつってどれですか?って聞いたら、オイルステインって言われて……」
「ああ、はい」
「でも、店員さんも忙しそうですぐ行っちゃって……。もう少し詳しく聞きたかったんですけど……」
そこで一度、俺の方を見る。
「ご迷惑かなと思ったんですけど……」
そして、俺の買い物かごを見る。
「実際に作業されてそうな方がいたので……声を掛けちゃいました」
そう言って、女性はペコッと頭を下げた。
正直、時間はなかった。
現場では大工さんが待っている。
でも――
自分でやってみようとしている。
しかも、知らない人に声を掛けるのだって、きっと勇気がいったはずだ。
そんな気持ちを邪険にはできなかった。
「えっと……何を作るんですか?」
そう聞くと、女性は少し嬉しそうに話し始めた。
どうやら、自宅のトイレに棚を作りたいらしい。
「なるほど。それなら、オイルステインで大丈夫だと思いますよ。ただ、木の種類によって色の出方が結構変わります」
「そうなんですか?」
「はい。あと、塗る前に……」
そこから、しばらく塗料の話をした。
話しているうちに、ふと思い出した。
今、俺が向かっている現場でも――
トイレのカウンターを、大工さんに造作してもらっていた。
「そういえば……」
俺は女性にその話をした。
「今ちょうど、近くの現場で大工さんにトイレの造作をしてもらってるんですよ」
「えっ!」
女性の顔がパッと明るくなった。
「見てみたいです!」
……そこまで?
正直、少し驚いた。
「いや、空き家の売り物件なんですけど……」
「それでも大丈夫です!」
目が完全に本気だった。
DIYが好きで、自分でも色々作っているらしい。
そして何より――
プロが実際に作っているところを見てみたい。
その気持ちが伝わってきた。
「じゃあ……大工さんに聞いてみます」
その場で大工の大山さんに電話をした。
事情を説明すると、
「いいですよ。連れてきちゃってください」
いつもの大山さんらしく、あっさり了承してくれた。
「大丈夫だそうです」
そう伝えると、
「本当ですか!」
また目が輝いた。
女性も車で来ていたので、
「じゃあ、現場まで案内します。車でついてきてください」
そう伝えた。
ただ、途中ではぐれてしまうと困る。
「念のため、LINE交換しておきましょうか」
「あ、はい!」
そこで初めて、名前を知った。
葉山さん。
『葉山です』
お辞儀をするスタンプと一緒に、メッセージが届いた。
俺も簡単に挨拶を返した。
そして、現場へ向かった。
⸻
現場に到着すると、大山さんに葉山さんを紹介した。
「大山さん、こちら葉山さんです。DIYが好きで、今日ホームセンターで知り合って……」
「葉山です。突然申し訳ございません」
葉山さんは、また深々と頭を下げた。
大山さんは笑いながら、
「いやいや、全然いいですよ」
すると葉山さんは、現場を見渡しながら言った。
「DIYが大好きで……」
そして、トイレの造作を見つける。
「まさかプロの方に直接教えてもらえるなんて……」
本当に嬉しそうだった。
「ありがとうございます!」
その目はキラキラしていた。
完全に――
学ぶ気マンマンだ。
その姿を見ながら、俺は思った。
ホームセンターの塗料コーナーで、たまたま声を掛けられた。
ただ、それだけの出来事だった。
でも、あの時もし俺が、
「分かりません」
と言っていたら。
もし、急いでいるからと、そのまま立ち去っていたら。
きっと、この出会いはなかった。
人との出会いって、本当に不思議だ。
そして、この時の俺はまだ知らなかった。
このホームセンターでの出会いが――
この後、もう一つの「ドキドキ」に繋がっていくことを。
……もちろん、
あくまでもリフォーム相談で伺った話だけど。笑



