憧憬少女

ラストの客をドア前から見送った後、照明を1番明るく付ける。

店のコース設定は、60分、75分、90分、120分のみ。

今日は3人の本指名が、全員ロングコースの120分だった。

1本目のタナカさんの接客を終えて見送った後、5分で軽く化粧直しをして、乱れたマットレスのシーツを直して、次の客を迎える、その繰り返し。

風俗で絶対に稼げる保証なんてない。
出勤しても客がつかなくて、給料ゼロで帰るキャストもいる。

恵まれているのか、今のところ、出勤日は殆ど休憩時間なしで働けている。

カゴから私服のニットとスキニーを取り出す。

着替えを済ませて、ぼんやりとした頭で考える。

どうして働いてるだけなのに、人気がどうとか、ナンバーがどうとか言われるんだろう。

ランキングなんて気になったこともないし、予約が取れないと私に嘆いても解決しないのにな。

接客中、客に対して気持ちや心なんて込めない。

ただ作業をこなしている感覚だ。
それを見抜かれないように、愛想良く笑って、客が求める『ユキ』を演じている。

客がつかない時、キャストにプレイルームは与えられない。
客がつくのを待つ間は、集団待機室で過ごさないといけないと、入店時の説明で聞いた。

…いつか、私も集団待機室で客がつくのを待つ日が来ちゃうのかな。

得体の知れない不安に駆られそうになって、頭を振った。

先のことなんて分からない。考えるのをやめよう。

置き時計は、0:20を示していた。

営業時間はとっくに過ぎている。早く精算を終わらせて帰ろう。

プレイルームから出て、狭い廊下を渡った先にある、受付兼・待合室へと足を急がせた。