嗚呼、愛しのアフロディーテ

「嫌、そんなの……死ぬ、なんて……」
「僕が死んでも、柊さんは困らないでしょう?」


坂本くんは、心底不思議だと言わんばかりに首を傾げている。


困らないかもしれないけど、自分が坂本くんが死ぬ何かのきっかけになってしまうのはあきらかだ。

抱き締めて生きてくれるのならいくらでも抱きしめるけれど、その逆となると嫌に決まっている。


「だって、私が抱き締めたら……し、し……」
「抱き締めてもらえなくても死にますけど」
「そ、そんな簡単に死ぬとか言わないでよぉ」


死ぬことに対してあまりにも落ち着いている坂本くんが怖くて、ぼろぼろと涙が出てきてしまった。

しゃくり返しながら両手で涙を拭っていると、坂本くんは「すみません」と小さく謝ってくる。


「もう、疲れてしまったんです」
「だっ、だからって……そんな……」
「僕が死んでも誰も悲しまない。友達もいないし、親も僕に関心がない。居ても居なくても変わらない」


吐き出すような言葉の節々には諦めも含まれている。

でも、そんなに簡単に諦めていいものなの?


「私は……どうなるの?」
「え……?」

「私は、坂本くんが死んだら、悲しいよ」