午前中の授業は、驚くほど普通だった。
蒼空は先生に指名されて完璧に答えていた。
さすが蒼空。実は学年一頭いいんだよね。
「桜庭」
突然、先生に名前を呼ばれる。
「はいっ!」
慌てて立ち上がった。
「この問題、解いてみろ」
黒板を見る。
……わからない。
いや、待って。
前にも、こんなことがあった。
私は答えられなくて、先生に怒られた。
「えっと……」
困っていると、隣から小さな声がした。
「右辺、移項」
蒼空だった。
私は慌てて黒板に答えを書いた。
「……正解」
先生が頷く。
ほっとして席に戻ると、蒼空が小声で言った。
「危なかったな」
「蒼空のせいでしょ!」
「俺、まだ何もしてないけど?」
「はいはいすみませんね、学年一位様」
ふたりで笑う。
こんなくだらないやり取りが、たまらなく嬉しかった。
私はノートの隅に、小さく書いた。

