「美月ちゃん……」
隣から、蒼空のお母さんの声がした。
私はゆっくり顔を上げる。
「少し、休もう」
「……ううん。大丈夫」
大丈夫。
その言葉を、今日だけで何回口にしただろう。
大丈夫なわけがない。
息をするたび、胸の奥がぎゅっと締めつけられる。
生まれた時からずっと一緒だった君がいない。
その事実だけが、頭の中で何度も繰り返される。
昨日まで、当たり前にあったものが。
朝起きれば届いていた、おはようのメッセージが。
帰り道に繋いでいた、君の大きな手が。
私の名前を呼ぶ、少し低い声が。
全部、全部。
もう、どこにもない。
「……蒼空」
小さく名前を呼んでみる。
返事はなかった。
当たり前だ。
そんなこと、わかってる。
わかっているのに。
「ねえ、蒼空」
もう一度、呼んだ。
「……起きてよ」
遺影の中の君は、笑ったままだった。

