『美月へ。
この手紙を美月が読んでいる頃、俺はもう、美月の隣にはいないのかな。
こんなことを書くのは、正直、すごく怖い。
できることなら、こんな手紙を書かずに済む未来がよかった。
美月と一緒に、何年も、何十年も生きていたかった。
でも、俺にはずっと隠していたことがある。
俺の心臓の病気のこと。
美月には、ちゃんと話したつもりだったけど、本当はまだ伝えられていないことがあるんだ。
俺の病気は、思っていたよりもずっと悪くなっていた。
医者から、長くはないと言われた。
詳しいことを聞いたとき、俺は何も考えられなかった。
怖かった。
死ぬことも。
美月を一人にしてしまうことも。
何より、美月と一緒に過ごす未来が、俺にはもう残されていないかもしれないことが。
医者から言われたのは、7月中。
俺の命は、7月中には終わってしまうかもしれない。
そう聞かされたとき、真っ先に美月の顔が浮かんだ。
美月と過ごした時間。
くだらないことで笑い合った日。
初めて手を繋いだ日。
美月が俺の名前を呼んでくれる、その声。
全部、全部、忘れたくなかった。
もっと一緒にいたかった。
もっと美月の隣にいたかった。
もっと、いろんな景色を見たかった。
来年の夏も。
その次の夏も。
美月と一緒に、海に行きたかった。
でも、俺は美月に嘘をついていた。
大丈夫だって。
まだ平気だって。
本当は、怖くて仕方なかったのに。
ごめんな。
美月を悲しませたくなくて、言えなかった。
でも、今ならわかる。
美月は、俺がどんなに弱くても、きっと受け止めてくれたんだよな。
だから、もしもう一度会えるなら、今度こそ全部話したい。
怖いことも。
苦しいことも。
美月と一緒に生きていたいっていう、俺の本当の気持ちも。
本当は入院しなきゃ行けなかったけど、残り少ない時間どうしても美月と過ごしたかった。
最後は美月の笑顔で俺の記憶を埋めたかった。
俺のわがままだったんだ。
ごめんな。
美月。
俺は、美月と出会えて本当によかった。
美月が俺の隣にいてくれたから、俺は何度も頑張れた。
病気のことを忘れて笑えた。
未来のことを考えて、幸せになれた。
美月と過ごした時間は、俺の宝物だ。
だから、最後に一つだけお願いがある。
どうか、俺がいなくなったあとも、幸せになってほしい。
俺のために、ずっと泣かないで。
いつか、美月のことを心から大切にしてくれる人に出会ったら、俺のことは忘れて、その人と一緒に生きてほしい。
美月を笑顔にしてくれる人。
美月が泣いたとき、そばにいてくれる人。
美月のことを、俺と同じくらい大切にしてくれる人。
そんな人と出会って、幸せな家庭を築いてほしい。
あ。俺に遠慮なんてしたら、化けて出てくるからな!!
幼なじみとして遠慮は絶対に許さん。
好きな人と結婚して、いつか子どもができて、家族で笑い合って。
そんな幸せな未来を、美月には生きてほしい。
俺が隣にいなくても、美月が幸せなら、俺はそれだけで嬉しい。
美月がくれた時間は、俺の一生分の幸せだった。
来年の夏も、その次の夏も。
美月が笑っていてくれますように。
朝比奈蒼空』

