「美月、そろそろ学校行かないと遅刻するよ」
蒼空の声に、私はハッと顔を上げた。
「あ……うん!」
鏡に映った自分の顔は、ひどいものだった。
目は赤いし、髪はぐちゃぐちゃ。
でも、そんなことどうでもよかった。
蒼空と一緒に学校に行ける。
その事実が、嬉しくてたまらなかった。
「……なに笑ってんの?」
玄関で靴を履いていると、蒼空が不思議そうに私を見た。
「え?」
「いや、さっきからずっと笑ってるから」
私は、慌てて口元を押さえた。
だって。
嬉しいんだもん。
君が生きていることが。
君の隣にいられることが。
「……なんでもない」
「変なの」
蒼空は笑って、玄関の扉を開けた。
「ほら、行くぞ」
「うん!」
外に出ると、七月の暑い風が頬を撫でた。
蝉の声。
照りつける太陽。
いつもと同じ通学路。
なのに、すべてが違って見えた。
隣を歩く蒼空の横顔を、何度も盗み見る。
君の髪が風に揺れる。
君が、私の方を向いて笑う。
「……なに?」
「ううん」
「さっきから見すぎ」
「……だって」
私は、少しだけ俯いた。
「蒼空の顔、見たかったから」
言ってから、恥ずかしくなった。
蒼空が一瞬、黙ったから。
そして。
「……なにそれ」
耳を赤くして、そっぽを向いた。
「美月、今日なんか変」
「……そうかな」
「うん」
君は笑った。
その笑顔を見て、私は思った。
ああ。
私、やっぱり君が好きだ。
何度生まれ変わっても。
何度、君を失ったとしても。
きっと私は、君に恋をする。

