蒼空が連れてきてくれたのは、海だった。
青い空。
白い雲。
波の音。
砂浜には、夏休みを楽しむ人たちの姿があった。
「わあ……!」
思わず声が出た。
「ここ、覚えてる?」
蒼空が尋ねた。
私は頷いた。
「うん。中学のとき、みんなで来たよね」
「そうそう。陸が海に飛び込んで、莉子に怒られてた日」
「あはは! あったね!」
懐かしい記憶が蘇る。
あの日も、こんなふうに蒼空が笑っていた。
「実はさ」
蒼空が少し照れくさそうに言った。
「また四人で来たいなって思ってたんだよね」
「……うん」
「でも、今日は二人で来たかった」
私は蒼空を見上げた。
「なんで?」
「……なんでって」
蒼空は頬を掻いた。
「たまには、彼氏らしいことしたいじゃん」
その言葉に、胸がいっぱいになった。
「……蒼空」
「ん?」
「ありがとう」
「なんでお礼?」
「嬉しいから」
蒼空は一瞬驚いたあと、優しく笑った。
「……そっか」
私たちは砂浜を歩いた。
波が足元まで寄せては、静かに引いていく。
蒼空は靴を脱いで、海の中に足を入れた。
「冷たっ!」
「え、そんなに?」
私も靴を脱いで、そっと海に足を入れる。
「ほんとだ、冷たい!」
二人で笑った。
蒼空が水をすくって、私に向かって飛ばした。
「ちょっと!」
「ははっ!」
「やったな!」
私も水を飛ばし返す。
しばらく、子どもみたいにはしゃいだ。
気づけば、息が切れるほど笑っていた。

