何度も何度も来た病院の待合室は、静かだった。
嫌な思い出。
でも今日は隣に蒼空がいる。
受付の向こうから、看護師さんの声が聞こえる。
蒼空は隣に座ったまま、ずっと手を握りしめていた。
「……怖い?」
私が尋ねると、蒼空は首を横に振った。
「別に」
「嘘」
「……ちょっとだけ」
その言い方が、あまりにも蒼空らしくて。
私は笑いそうになった。
でも、笑えなかった。
だって、彼の手が震えていたから。
「美月」
「ん?」
「俺、ずっと言わなきゃって思ってた」
蒼空は私を見ずに言った。
「でも、言ったら……美月が悲しむと思って」
「……うん」
「泣くと思って」
「……うん」
「俺のこと、ずっと心配すると思って」
「……うん」
私は、握りしめられた彼の手にそっと触れた。
「それでも、聞きたい」
蒼空が顔を上げた。
「何も知らないまま、蒼空がいなくなるのは嫌だから」
その瞬間、蒼空の表情が崩れた。

