「美月、おはよ」
昇降口で靴を履き替えていると、後ろから聞き慣れた声がした。
振り返ると、蒼空が立っていた。
いつもと同じ笑顔。
いつもと同じ、少し寝癖のついた髪。
何度も見てきた、私の大好きな人。
「おはよう」
「なんか今日、顔怖くない?」
「そんなことない」
「いや、怖いって。俺、なんかした?」
「……した」
「え、なに?」
「隠し事」
蒼空の笑顔が、一瞬だけ止まった。
ほんの一瞬。
でも、私にはわかった。
「……まだ怒ってんの?」
「怒ってるんじゃない」
私は蒼空を見つめた。
「心配してるの」
蒼空は困ったように笑った。
「大丈夫だって」
その言葉を聞くたび、胸の奥がぎゅっとなる。
大丈夫じゃないことを、私は知っている。
何度も、目の前で失ってきたから。

