そのときだった。
机の上に置かれた、君の腕時計が目に入った。
付き合って半年の記念日に、私がプレゼントしたもの。
黒い革のベルトに、銀色の文字盤。
君は、受け取ったとき、子どもみたいに笑っていた。
『これ、ずっと大切にする』
そう言って、毎日つけてくれていた。
私は、そっと腕時計を手に取った。
「……蒼空」
冷たい金属の感触が、指先に伝わる。
針は、午後十一時五十七分を指していた。
止まっているのかな。
そう思って、文字盤を見つめた。
けれど。
秒針は、ゆっくりと動いていた。
カチ。
カチ。
カチ。
まるで、君がまだ生きているみたいに。
私は、腕時計をぎゅっと握りしめた。
「……ねえ、神様」
誰もいない部屋で、ぽつりと呟く。
「もし、本当に神様がいるなら」
涙が、頬を伝った。
「一度だけでいいから」
どうか。
どうか、もう一度。
「蒼空に、会わせてください」

