その青は還る 完結

 次の日。自宅で昼まで寝ていて、起きた時に携帯を確かめた。だが、そこに歌音からの連絡は見当たらなかった。予想通りではあるが、何もできない日が続いていて、深いため息が漏れた。

 どこかに行こうかと考えたところで、どこへ行っても同じようなことを考えそうな気がして、久しぶりに食事を作ろうと思いついた。冷蔵庫から適当な具材を選んで切って、パックご飯をレンジで温めて、フライパンを手に炒飯を作った。だが、出来上がってみれば、それとは呼べない代物だった。

 そのままデスクに向かい、椅子に腰を下ろしてPCを立ち上げた。適当な配信サイトを開いて、深夜番組の再放送をクリックした。すると、二人のアメリカ人がコメディのように両脇から出てきて、キッチンの前でフライパンを紹介し始めた。

 俺は食事を口にしながら、番組をただ聞き流していた。皿に盛った炒飯は所々冷たくて、具材の切り方も乱雑だった。おまけにご飯はベタついていて、卵も上手く馴染んでなかった。それでも味は悪くないと思ったところで、徐々に口元が綻んだ。

 食事を終えたあとで洗濯をして、鴨居に掛けて並べてから、煙草を口にしてジッポを手に、窓辺に向かった。火を点けてから、外を覗くと、色褪せた空に虹が掛かっていた。そこでよく見れば、道路にいくつも水たまりができていた。幼い子どもが黄色い合羽を着て、雨上がりの道を歩き、小さな水たまりを飛び越えていった。

 どこからともなく夕焼けの歌が聞こえてくると、自転車に乗った学生の姿が増え、次々に制服を着た少女や少年が楽しそうに通り過ぎていった。

 俺は窓辺で頬杖をついて、煙草をくわえながら、しばらく眺めていた。

 夕焼けの歌が消えかけると、車の往来が増え始めて、スーツを着た人が道路脇を歩いていった。そして空が赤く染まる頃に、買い物袋を下げた女性が駆け足で通り過ぎていった。

 目の端では街灯が点き始めて、次第に辺りは夜を迎えていた。そこで、煙草の煙が緩やかな線を描いて消えていった。

 すでに灰もない煙草を手にし、窓を閉めてから、デスクにある灰皿へ落とした。そこから車のキーを取ると同時に、PCの電源を落とした。煙草とジッポをポケットに入れ、部屋を出てから、車に乗り込んだ。スタジオに行こうかと思ったが、その前に店を訪ねることを思いついて、コインパーキングに車を停めた。

 店に着いて、違う黒服に聞いてみると、「出勤はしません」と返されて、すぐに俺は踵を返し、車に戻って、スタジオへ向かった。