能力スコア ~小鞠の繰り返し~

 私は自分の部屋にいた。スマホのアイコンをタップしたのは覚えている。机の上に置いてあるノートには1年3組 宮村 小鞠と書いてある。壁に貼り付けているカレンダーを見てみると、どうやらここは私が高校1年生の頃のようだ。

 なんか驚きすぎて、逆に冷静になっている気がする。さて、ここからどう行動すればいいのだろうか。とりあえず、学校へ行って、家へ帰って、ご飯を食べる。そう言う普通の生活をしながら、これからの事を考えよう。

 以前と違って、テレビの内容をよく考えて観たり、新聞をよく読んだ。前はあまり気にならなかったが、人工知能の番組や記事が多かった。
 ネットでSNSを見ると、一部で人工知能の進化に驚いたり、脅威を感じている人達がいた。

 ある日、テレビを観てると、『正当な評価とは?』を題材にした番組が放送していた。
「人は正当に評価されるべき。そして、評価の高いものはそれ相当の対価を得るべき」
「もちろん、その通りだ。だが正当な評価とは?」
「人工知能で測ってもらうのはどうでしょう。今、人工知能の進化がすごいですよ」
 テレビ内で、そんな会話がなされていた。これが能力スコアとなり、就職等で評価として使われるのだろうか。私はちょっとゾッとした。

 翌日、このテレビで放送したことが学校で話題になっていた。
「やっぱり正当な評価が欲しいよね」
「学校のテストだけじゃ、正しくはわからないわよ」
「人工知能なら安心だ」

 皆、何気なく会話をしているが、これはとても危険なことだ。しかし、私も能力スコアで測られる世界を体感しなければ、この人たちと同じような感想になったかもしれない。


 2年後。

 危機を抱きながらも、何もできず、そのまま就職活動の時期が来てしまった。
 またしても能力スコアが低かったようで、施設へ入ることになってしまった。
「私は渡辺 楓。ここは初めて?」
「はい。そうです」
「僕は神北 桂一。よろしく!」
「宮村 小鞠と言います。よろしくお願いいたします」

 そして、また楓と桂一が友達となった。

 この日の食堂のメニューはコッペパンとスープだった。水は無いらしく、パンより、先にスープを飲みほしたので、パンがなかなか口に入らなかった。

 1年後、施設を出るかどうかの選択を迫られた。

 もちろん、結末を知っているので、私は施設から出ないほうがいいと言った。
「何を言っているんだ。こんな怪しい施設にいられないよ」
「私はまた頑張ってみるんだ」
 二人は聞き入れてくれなかった。私も二人が心配なので、施設を出ることにした。

 数年後。

 テレビが何やら騒いでいる。
「IT企業の社長、神北 桂一さんが溺死体で発見されました」
 やはり、この時が来てしまったか。多少の行動のずれで、回避できるかも……と望みをかけたが無理だったみたいだ。

 そして、楓と会う。自宅へ戻ると封書があった。書いてあることも同じだった。

 ブーブー…… ブーブー……

 スマホが震えだした。
『私はメビウス。この世界をやり直してみないかい? 大切な人がいなくならない世界とか』

 やはりこのメッセージが来たか。しかし、このメビウスというのはいったい何者なんだ。

 いろいろと疑問な点はあったが、私はそのアナログ時計のようなメビウスのアイコンをタップした。