能力スコア ~小鞠の繰り返し~

 あれから3年が過ぎた。私もなんとか就職し、仕事をしている。
 しばらく皆とも連絡を取ってなかったが、ひさびさに楓からスマホに電話があった。
「施設にいた桂一、就職した後、いろいろと技術を得たらしくて、独立したみたいよ」

 そう言うわけで、私と楓、そして桂一とお店で食事をすることになった。 お店に着いて、先に席で待っていると、二人が来た。

「お待たせ!」
「ごめん、ちょっと遅れちゃった」
 話を聞くと、楓も就職し、順調らしい。

 私たちは昔の話に花を咲かせた。あんな施設でも、友達との生活は楽しかったんだなと改めて思った。
「じゃあな。またいつの日か」
「また会おうね」

 そう言って、私たちは別れた。今度はいつ会えるのだろうか。その時、楓と桂一はどんなふうになっているだろう。


 数年後。

 私はいつも通り、仕事に行く準備をしていた。テレビからは朝のニュースの声がした。
窓から空を見ると、どんよりしている。こういう空を見ると、心が荒みそうだ。

 うん? なにやらテレビから騒いでいるような声がする。

「IT企業の社長、神北 桂一さんが溺死体で発見されました」
 神北 桂一? この前、会った桂一なの? そう思ってテレビのほうを向くと、やはりその桂一の顔が映し出されていた。

 ブーブー…… ブーブー……

 その時、スマホから電話がかかってきた。画面を見ると、楓からだった。
「テレビ見た? あの桂一だよね? どういうことなんだろう。私、よくわからない」
「ちょっと話をしよう。明日会える?」

 私は楓と明日、会う約束をした。なぜ、桂一が溺死体に。殺されたのだろうか。あのうさんくさい施設がかかわっているとしたら……

 その夜はほとんど寝られなかったが、今日は楓と会わなければならない。体調があまり良くなかったが、約束した喫茶店へ向かった。
 空を見ると、今にも雨が降りそうだった。急いで出てきたので、傘も忘れてしまった。降らなければいいけど。
 そんなことを思いながら、喫茶店へと急いだ。

 カラン……

 ドアを開けると、すでに楓ではテーブルに着いていた。楓はちょっとこわばった顔をしていたが、私が着いたことを知ると、少し安堵したような顔になった。
「実は聞いて欲しいことがあるんだけど」
「なに?」
 楓は施設にいた頃にあった話をし始めた。

「施設にいたときに、変な話を聞いちゃったのよ。ちょうど施設長室の前にいたときなんだけど、ドアがちょっと開いていたんだよね」

 どうやら、施設長が誰かとこんな会話をしていたらしい。
『あんなハンドル、いくら回しても無意味だ。ここは能力の低いやつを隔離するための施設だからな。スコアの低いやつを外へ出してはいけない』

 うーん。どういうことだろう。なんか、スコアの低い者が、後で何かで成功しては困る。とも読める。
「なんか怖いよね」

 ちょっと怯えた目でこちらを見ていたが、私だって、もちろん怖い。しかし、何をすればいいかもわからず、とりあえず、私たちは店を出た。
「じゃあ、また何かあったら連絡ちょうだいね」
「うん」

 私はそう言って、先ほどのまま空がどんよりしている中、速足で家へ向かった。いそいそと歩き、そして時々小走りを繰り返し、なんとか家へ着いた。

 ザーーーー

 その瞬間、大雨が降ってきた。ギリギリ間に合ったみたいだ。自宅のポストを見てみると、なにやら大きな封筒が入っていた。すぐに取り出し、玄関で差出人を見た。
 うん???
『神北 桂一』からであった。

 どういうことだろう。私は焦りながら封筒を開けてみた。
 大きな紙が何枚か入っていた。読んでみると、こう書かれていた。

『能力スコアは街の監視カメラなどから主人公の行動を見て決めている。もちろん、それだけではない。日頃の行動から常に気を付けること』

 他にもそこまでの考えに至った資料などが入っていた。

 ブーブー…… ブーブー……

 スマホから電話がかかってきた。楓からのようだ。
「なんか、家に帰ったら封筒がポストに入っていたんだけど。そっちは?」
「こっちもあったよ」
「そっか。もう読んだよね」
「うん……」

 桂一はただの溺死なのだろうか。本当は殺されたのでは。私はそんな気がした。
 楓との会話が終わり、スマホを置いた瞬間。

 ブーブー…… ブーブー……

 うん? 今度は電話ではないっぽい。よく見ると何かメッセージが来ていた。
『私はメビウス。この世界をやり直してみないかい? 大切な人がいなくならない世界とか』

 なんだろう。このメッセージは……

 そう思っているうちに、スマホになにかアプリが勝手にインストールされていた。そしてアイコンが作成された。
 アイコンにはアナログ時計のようなものが描かれている。しかし、時間を表す数字は、逆になっていた。12時から反時計回りに1、2、3と続いていた。

 ひょっとして、過去に行くことができるかも。私はとんでもないことを思った。
 そして、すでにアイコンをタップしていた。