私は毎日、ぐるぐるとハンドルを回していた。
ハンドルを回している間に、時々周りから話声がする。皆、ハンドルを回しているだけでは退屈なんだろう。
「いつまで回していればいいのかなぁ」
「ちょっと疲れるよね」
不満の声が周りからする。私もこのハンドル回しには疑問が残る。何か意味はあるのだろうか……と。
「こらっ、そこおしゃべりしない!」
教官の怒鳴り声がする。
「ごめんなさい」
「すみません」
おしゃべりしていた二人がすぐにまたハンドルを回し続ける。
『キーンコーンカーンコーン』
昼食の合図だ。皆は食堂へ向かう。
「じゃあ、行こうか」
「行くよ!」
私も楓と桂一と共に食堂へ向かった。最近は私を含めてこの三人でお昼を食べることが多い。
トレーを持って、列へ並ぶ。
食堂のおばさんはトレーに昼食を乗せる。今日は麦ごはんと緑茶のようだ。
そして、私達三人は席へ着く。
「ハンドルを回すだけで食事ができるなんていいね」
「ああ、そうだな」
楓も桂一も嬉しそうに麦ごはんを食べる。
午後もハンドルを回し、自分の部屋へ戻った。
部屋は個室になっているが、ベッドと小さな机があるだけで、部屋自体はとても狭い。廊下へ出たりはできるが、建物自体から出ることはできない。
私は机の前で椅子に座りながら、いろいろと考えていた。
考えているうちに、私はちょっと心配になってきた。いつまでこんなことが繰り返されるのだろう。一生このままなのか。
明日はちょうど外出許可日だ。一か月に一回、施設の外に出ることができる。本屋にでも行って、なにか勉強になるものでも買ってこよう。
翌日。
チュンチュン。
チュンチュン。
スズメが鳴いている。朝食をそそくさと済ませ、私は施設の外へ出た。久々に街の空気を吸った気がした。
知っている街ではないが、適当に商店街などを歩き、本屋を探した。
『物理堂書店』
そう書いてある看板を見つけた。大きさは中程度だろうか。とりあえず中へ入ってみた。
お堅い名前の書店なのか、漫画本は少なく、資格や学術的な本が多く並んでいた。
私はいくつか勉強になりそうな本を取り、中を少し読み気に入ったものを何冊か購入した。
施設へ帰り、すぐに自分の部屋へ入った。
この施設で、勉強している姿はあまり見られないほうが良い。なんとなく私はそう思った。
夜になり、買ってきた本を読み始めた。
コツ。コツ。コツ。
本を読み始め、1時間ぐらい経った頃だろうか。部屋のドア付近で人の歩く音がした。看守なのか。私は読んでいた本を机の下に隠した。
一瞬、私の部屋の前で足音が止まったが、少しの間をおき、再び足音がし、だんだんとその音が小さくなっていった。
「ふぅ。見られなくて良かった」
何日か、この勉強を続けていたが、夜以外も勉強をしたくなって、私は昼食後も人目を盗んで勉強をし始めた。
何日か経った、ある日。
楓と桂一と三人での昼食後、私はまた一人で外のグランドの死角で勉強をし始めた。
「しかし、毎日の勉強は疲れるな」
うっかり独り言を漏らすと、後ろからなにやら気配がした。動物などではなく、どうやら人のような感じだった。
「どうしたの?」
「何しているんだ?」
焦って、声を方向を向くと、楓と桂一がいた。
「いや。えーと」
私はどう説明すればいいのかわからなかった。
動揺していると、桂一と楓がポケットから本を取り出した。
「俺たちも勉強しているんだぜ」
「そうなのよ」
そして、桂一がグランドから施設にある建物のほうへ目を向けた。
「ハンドルを回しているだけで、ご飯が食べられるなんておかしい。何かあるはずだ。まずは施設を出ることを考えよう」
私たちは一生懸命、勉強をした。そして、一年が経った。
いつもの昼食後、私たちは施設のグランドの脇にある、休憩所の椅子に座った。
「この施設は年に一度、更新があり、ここを離れることも可能だ。ただ、一定期間、就職できないと、また連れ戻される」
桂一が真剣な表情で話し始めた。
「俺はここを離れる。皆はどうする」
桂一の問いに楓と私はこう答えた。
「もちろん、出るわ」
「うん。この施設からは離れたい」
そして、桂一はこう言った。
「俺も出ていく。この怪しい施設とも、おさらばだ」
10日後。
施設の門の前で、私たちは最後の話をした。
「じゃあな」
「じゃあ、私もこれで」
桂一と私が別れの挨拶をすると、楓が下を見ながら何かを言い始めた。
「実は……。私には記憶がない期間があるの。自室にはパソコンがあるはずだけど、なぜか暗号化されていて見られないの。でも、あまり関係ない話だったかな」
私は楓の記憶の事と、暗号化されたパソコンのことが気になったが、まずは自分のこれからの事を考えるしかなかった。
ハンドルを回している間に、時々周りから話声がする。皆、ハンドルを回しているだけでは退屈なんだろう。
「いつまで回していればいいのかなぁ」
「ちょっと疲れるよね」
不満の声が周りからする。私もこのハンドル回しには疑問が残る。何か意味はあるのだろうか……と。
「こらっ、そこおしゃべりしない!」
教官の怒鳴り声がする。
「ごめんなさい」
「すみません」
おしゃべりしていた二人がすぐにまたハンドルを回し続ける。
『キーンコーンカーンコーン』
昼食の合図だ。皆は食堂へ向かう。
「じゃあ、行こうか」
「行くよ!」
私も楓と桂一と共に食堂へ向かった。最近は私を含めてこの三人でお昼を食べることが多い。
トレーを持って、列へ並ぶ。
食堂のおばさんはトレーに昼食を乗せる。今日は麦ごはんと緑茶のようだ。
そして、私達三人は席へ着く。
「ハンドルを回すだけで食事ができるなんていいね」
「ああ、そうだな」
楓も桂一も嬉しそうに麦ごはんを食べる。
午後もハンドルを回し、自分の部屋へ戻った。
部屋は個室になっているが、ベッドと小さな机があるだけで、部屋自体はとても狭い。廊下へ出たりはできるが、建物自体から出ることはできない。
私は机の前で椅子に座りながら、いろいろと考えていた。
考えているうちに、私はちょっと心配になってきた。いつまでこんなことが繰り返されるのだろう。一生このままなのか。
明日はちょうど外出許可日だ。一か月に一回、施設の外に出ることができる。本屋にでも行って、なにか勉強になるものでも買ってこよう。
翌日。
チュンチュン。
チュンチュン。
スズメが鳴いている。朝食をそそくさと済ませ、私は施設の外へ出た。久々に街の空気を吸った気がした。
知っている街ではないが、適当に商店街などを歩き、本屋を探した。
『物理堂書店』
そう書いてある看板を見つけた。大きさは中程度だろうか。とりあえず中へ入ってみた。
お堅い名前の書店なのか、漫画本は少なく、資格や学術的な本が多く並んでいた。
私はいくつか勉強になりそうな本を取り、中を少し読み気に入ったものを何冊か購入した。
施設へ帰り、すぐに自分の部屋へ入った。
この施設で、勉強している姿はあまり見られないほうが良い。なんとなく私はそう思った。
夜になり、買ってきた本を読み始めた。
コツ。コツ。コツ。
本を読み始め、1時間ぐらい経った頃だろうか。部屋のドア付近で人の歩く音がした。看守なのか。私は読んでいた本を机の下に隠した。
一瞬、私の部屋の前で足音が止まったが、少しの間をおき、再び足音がし、だんだんとその音が小さくなっていった。
「ふぅ。見られなくて良かった」
何日か、この勉強を続けていたが、夜以外も勉強をしたくなって、私は昼食後も人目を盗んで勉強をし始めた。
何日か経った、ある日。
楓と桂一と三人での昼食後、私はまた一人で外のグランドの死角で勉強をし始めた。
「しかし、毎日の勉強は疲れるな」
うっかり独り言を漏らすと、後ろからなにやら気配がした。動物などではなく、どうやら人のような感じだった。
「どうしたの?」
「何しているんだ?」
焦って、声を方向を向くと、楓と桂一がいた。
「いや。えーと」
私はどう説明すればいいのかわからなかった。
動揺していると、桂一と楓がポケットから本を取り出した。
「俺たちも勉強しているんだぜ」
「そうなのよ」
そして、桂一がグランドから施設にある建物のほうへ目を向けた。
「ハンドルを回しているだけで、ご飯が食べられるなんておかしい。何かあるはずだ。まずは施設を出ることを考えよう」
私たちは一生懸命、勉強をした。そして、一年が経った。
いつもの昼食後、私たちは施設のグランドの脇にある、休憩所の椅子に座った。
「この施設は年に一度、更新があり、ここを離れることも可能だ。ただ、一定期間、就職できないと、また連れ戻される」
桂一が真剣な表情で話し始めた。
「俺はここを離れる。皆はどうする」
桂一の問いに楓と私はこう答えた。
「もちろん、出るわ」
「うん。この施設からは離れたい」
そして、桂一はこう言った。
「俺も出ていく。この怪しい施設とも、おさらばだ」
10日後。
施設の門の前で、私たちは最後の話をした。
「じゃあな」
「じゃあ、私もこれで」
桂一と私が別れの挨拶をすると、楓が下を見ながら何かを言い始めた。
「実は……。私には記憶がない期間があるの。自室にはパソコンがあるはずだけど、なぜか暗号化されていて見られないの。でも、あまり関係ない話だったかな」
私は楓の記憶の事と、暗号化されたパソコンのことが気になったが、まずは自分のこれからの事を考えるしかなかった。



